第388回 最低賃金1500円はいつ?

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第388回「最低賃金1500円はいつ?」


安田

最低賃金1500円が見送りになったそうです。

久野

はい。なんでこんなことになっちゃったのか。

安田

石破さん時代から「前倒しする」と言われていて、高市さんはさらに前向きだと言われてたんですが。地方の中小企業がすごく反対するらしいです。

久野

地方は最低賃金ギリギリで雇っている会社も多いですから。

安田

格差がすごく広がっているとも言われていて。格差を縮めるには最低賃金を上げていく必要がありますけど。

久野

それでは成り立たない会社、成り立たない現場が圧倒的に多いってことでしょう。でもそこに挑戦していかないと日本は変わらないですよ。

安田

そうですよね。最低賃金1000円も昔は「絶対に無理」って言われていたので。

久野

今のインフレスピードを考えたら1500円でも低いです。ただ1500円にするには毎年7%ぐらい上げなきゃいけなくて。

安田

つまり7%アップは経営者の義務ってことですね。都心部では家賃が高騰してすごいことになっていますし。額面20万円だと都心では生活出来ない。

久野

地方も同じですよ。確かに住宅だけは安いけど、それ以外のものが値上がりしているので。物流コストで逆に都心より高かったりします。

安田

田舎に行ったら安く暮らせるってわけでもないですね。つまり人を雇うんだったら最低でも25万ぐらいは払わないといけない。

久野

そう考えると1500円は達成しなくちゃいけないラインですね。

安田

とうかいさんのクライアントはどうですか?1500円になると困る企業が多いですか。

久野

いえ。うちのお客さんは元々給料が高い会社が多いので。もちろん困る経営者もいるとは思いますけど。

安田

そもそも東京だと最低賃金ではもう人が集まらないです。

久野

そうなんですよ。だから経営者はもう腹を括るしかない。ルールさえ決まっちゃえばそれに合わせてビジネスをやるだけじゃないですか。みんなで値上げして。

安田

値上げせず頑張るという戦略ではもうダメですか?

久野

それでも給料を増やしていける会社ならアリだと思います。「みんなで我慢するぞ」みたいな価格の据え置きがいちばん良くなくて。

安田

つまり給料を上げられない会社はもう未来がないと。

久野

その力がなかったら退場するしかないです。

安田

「利益が増えたから給料を上げる」という順番では今の時代は難しいんでしょうね。
人が来ないし、辞めちゃうし。

久野

はい。先に給与を上げられない会社は利益も出ない。それが現状ですね。

安田

人がいないと利益を出せない会社は時給1500円なんて当然突破しないといけない壁だと。

久野

今までの30年間がおかしかっただけで。みんなデフレに慣れすぎているんです。普通に物価が上昇していたらもう1500円になってますよ。

安田

慣れとは恐ろしいものですね。給料も商品力も据え置きが当たり前になっています。

久野

はい。価格が据え置かれてきた分、商品力も据え置かれてきた会社が多いです。

安田

でも値上げするなら、まずは商品価値を高めていかないと。クライアントにお願いするだけでは価格アップなんて無理ですから。

久野

本当に強い商品であれば高くても売れるはずなので。そもそも中小企業はそこが弱すぎるんです。だから「嫌なら他にいくらでもいるよ」って話になっちゃう。

安田

最低賃金1500円の先延ばしは、そういう会社の延命をしているだけに見えます。

久野

ほんとそうですよ。1日も早く上げた方がいいと思います。たとえば「5年後に1500円になります」とか決めちゃって。それまでは自由にやらせればいい。

安田

なるほど。それはいいアイデアですね。

久野

今みたいにちょっとずつ上げる方式だと大きな変化が起きにくいので。1500円になるとビジネスモデルをガラっと変えなきゃいけなくなる。

安田

5年経っても1500円に上げられない会社はもう廃業だと。

久野

5年の猶予を与えて予告する。「どうせ先延ばしにするだろう」って思われてるから何も変わらないんですよ。

安田

期限を決めて一気に上げるのが理想だと。確かにそれがいいかもしれません。

久野

そもそも2029年に1500円が目標でしたから。ここを先に決めちゃえばいいんです。

安田

安売りではもうダメだと。

久野

安売りでは中国やベトナムに勝てないですから。とにかく商品価値を上げていかないと。

安田

「安く仕事やらせていただきます」が中小企業の文化になっちゃってますよね。

久野

30年のデフレでそうなっちゃったんですよ。

安田

高くても欲しいと思ってもらえるものを作る。これ以外に方法はないと。

久野

みんな勘違いしてますけど、安くしても売れないんですよ。日本人は本当に買いたいものしか買わないので。

安田

安くて品質の良いものを提供できるのは大手だけですよね。

久野

はい。中小企業は絶対にそこを追いかけてはいけないです。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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