2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第176回「2022年大胆予測」
第177回「安売りスーツの未来」
スーツ不振が凄いですね。
はるやま、コナカ、AOKI、青山。もう壊滅状態です。
大手4社のスーツ会社がことごとく赤字らしくて。リモートワークの影響が大きいそうで。
もうずっと前からです。
そうですよね。労働人口は減ってるし、スーツにこだわる会社も減ってるし。とは言えコロナが落ち着けば少しは持ち直すんでしょうか。
いや、もっと減ると思います。
まだ減りますか。でもスーツがなくなることはないでしょう?
高級スーツを着る人は一定数残るでしょうね。マニュアル車に乗りたい人みたいな。
もはや趣味の領域ですね。
スーツにお金をかける人はそうでしょう。
仕事のために買うスーツならできるだけ安いのがいいですもんね。
おっしゃる通り。ただそのゾーンも今はユニクロにやられてます。
ユニクロってスーツまで売ってるんですか!
はい。ユニクロはスーツ売ってます。またこれが超よくできてるんですよ。
へぇ~。
もうユニクロで十分です。
売れてるんですか?
売れてます。僕はスーツ着ないけど、息子の卒業式の時に妻が「ユニクロでしょ」って。
へぇ~。
それで一緒にユニクロを見にいって。「ユニクロのスーツってどうなの」って正直思ってたんですけど。もうびっくり。すごくいい。上はブレザー、下はパンツ買って「はい終わり」ですよ。
私も子どもの服を買いによくユニクロに行きます。やっぱよくできてますよね。
できてますよねえ。
使いやすいようによく考えられてるし。
そして適度におしゃれだし。
そうですね。決して「安かろう悪かろう」って感じでもない。
生活シーンのいろんな場面でユニクロ1店あれば事足りるんですよ。ジルサンダーのコレクションまで出てるし。
すごい。
買い物のついでにユニクロ寄ればハイ終わり。わざわざはるやまとかAOKIとかコナカに行く理由がない。
大手4社のメイン顧客ってやっぱりおじさんですか。
いちばん使ってるユーザーはたぶん新卒の学生だと思います。
リクルートスーツですか。
就活の学生が業績を支えてるんじゃないんですか。ただ最終的にはスーツ全般に関して着物と同じ運命をたどると思う。
スーツを着なくなるってことですか。
着なくなるけどなくなりはしない。行事ごとには必ず使うから一定の数は残る。
大手4社は銀行みたいに合併しちゃうんでしょうか。
正直4社もいらないですよね。2社で十分って感じじゃないですか。
みなさん一等地に店舗をもってますし、社員もそこそこ抱えてますけど。
店舗を減らして人も減らして……っていうお決まりの話でしょうね。統合が発表されて2社ぐらいに収斂されるか、どこかの総合グループに入ってしまうか。
リモートに限界を感じて出社に戻す会社もあるらしいですけど。スーツのニーズは増えていかないですか。
コロナもあるけど、温暖化のクールビズがいちばん業界に打撃を与えてるから。
クールビズですか。
いまから十数年前に小池百合子さんが環境大臣だったとき、「夏もスーツにネクタイはやめてノーネクタイで」って。
はい覚えてます。あれでネクタイを外した会社は多いですよね。
ドレスコードを緩めて、半袖シャツにチノパンはいてもOKにしようと。要するに「スーツで上下“ビシッ”というのはやめましょう」と。
あれはスーツ業界に大打撃でしたね。
時の流れですよ。冷房をものすごくかけなきゃいけないし、地球にやさしくないから。あのクールビズで劇的にドレスコードが変わった。
確かに。ネクタイ以外のファッションも根底から変わりましたね。あそこがきっかけでどんどん緩くなって。
おじさんがネクタイ外すって、昔は失業者みたいな雰囲気だったじゃないですか。
そういうイメージでした。
今は逆ですよね。
確かに。上下スーツにちゃんとネクタイ締めてくる営業って、だいたい飛び込みの営業マン。ヨレヨレのスーツを着てます(笑)
ちょっと社名は控えますけど、オフィスサプライ系の、コピー機とか複合機とか、あれ系の方がだいたいヨレヨレの安いスーツ着てる。
そういう方々ってこの先も安いスーツを着つづけるんですかね。
会社の命令があるから。
そういう会社っていずれ滅んでいくでしょう?
オフィスサプライは会社自体に体力があるから、意外に残るかもしれません。
へぇ~。
「O商会」とか「Rコー」とか。あのへんは結構残ると思う。そしてそこの社員である以上は着つづけなきゃいけない。
いわゆるエリートのホワイトカラーみたいな人はどうですか。
スーツ着る人は激減しました。
今どきの知的労働者って、ラフでクリエイティブな服装してますよね。スーツにネクタイの人は肉体労働に見えてしまいます。
おっしゃる通り。現代のブルーカラー・ファッションですよ。
スーツ大手が今から手を打つとしたらどんな手がありますか。
僕が社長だったらもう一抜けする。売却します。
売却して別の仕事やると。
「はい、ここまで」みたいな。だって、もう無理ですもん、スーツなんて。
やっぱ無理ですよね。
ただ最後まで残ったところはずっとやると思います。
食っていけますか。
はい。みんなそこを狙ってるんですよ。残存者利益を取るチキンレース。「おまえが降りるか、俺が降りるか」って。
今はその真っ最中だと。
あと10年ぐらいはこれが続くでしょうね。
10年後には2社になってる?
もしくはどこかの事業部になってるか。どちらかでしょうね。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。