第201回「なぜ準備をしておかない?」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第200回「世界一厳しい消費者」

 第201回「なぜ準備をしておかない?」 


安田

JR九州に定年後の再雇用制度というのがありまして。

石塚

ニュースになってたやつでしょ?

安田

はい。再雇用の運転士さんが会社を訴えるそうで。「社員と同じ仕事を、同じ責任感でやっているのに、給料が半分になった」って。

石塚

「甘えたことを言ってるな」っていうのが僕の正直な感想ですね。

安田

ネットの意見もそんな感じでした。「そんな楽な仕事で半分もらえたら十分だろう」みたいな。

石塚

いやホントに。

安田

半分でも十分ですか。

石塚

嫌だったらJR九州を辞めて西鉄にでも転職すればいいんですよ。

安田

転職しても、そんなに給料は増えないんじゃないですか。

石塚

それが現実なんです。

安田

確かに。

石塚

現実を直視したほうがいい。

安田

「辞める前とくらべて半分になった」ってことですけど。今が安いんじゃなく、そのときが高すぎたってことですよね。

石塚

そんなのもう何年も前からわかってる話じゃないですか。

安田

再雇用されたら半分になるのは常識ですか。

石塚

常識ですよ。もうずっと前から言われてるのに、この10年間なにしてたんですか?ってこと。

安田

電車の運転をしていたんでしょう。

石塚

だから電車の運転だけしていたら、それは、そうなりますよ。

安田

運転士って命を預かる仕事じゃないですか。責任感も大きいと思うんですけど。

石塚

今はほとんど自動運転ですから。

安田

コメントにもありました。「ほとんど座ってるだけだろ」「俺が代わってやるよ」って。

石塚

逆に安全面から考えると、一定年齢を過ぎたら「乗務から外れる」という意識も持たないといけない。

安田

確かにそうですね。

石塚

いくら自動化されているとはいえ、反応スピードはどうしても落ちてくるから。

安田

運転士を続けること自体が無理だと。

石塚

60過ぎたら他の職種に回るってことも視野に入れなきゃ。

安田

他の仕事で今まで通り稼げますか。

石塚

無理でしょ。だから早く準備しないといけないわけですよ。

安田

自分で決断しなくちゃいけないと。

石塚

もちろん。会社はそこまで面倒見てくれませんから。

安田

大手では定年が延びて「65〜70までは雇え」って話になってると思うんですけど。

石塚

だから給料を下げるしかないんですよ。

安田

同じ給料を払いつづけるのは無理ですよね。でも不服に思ってる人が訴えているわけで。

石塚

まあ訴えても勝てないでしょうけど。

安田

仮に訴えている側が勝っちゃったりすると、今度は企業が再雇用しなくなるんじゃないですか。

石塚

おっしゃる通り。

安田

半分でも満足してる人からしたら迷惑な話ですね。

石塚

ホントそうですよ。かねがね言ってますけど「もう終身雇用はやめましょう」って話。

安田

そもそも「終身」じゃないですもんね。

石塚

こんなに寿命が延びたら終身なんて無理なんです。

安田

「死ぬまで」が長いですもんね。

石塚

そう。だから一番いいのは「10年区切りで考えよう」ってこと。全員が契約社員で全員が10年の有期雇用。

安田

本当にそういう時代になってきましたね。

石塚

それが一番まともだし、お互いのためなんです。10年後にこの会社ともう1回契約したいんだったら、なにが必要なのかってことを考えないと。

安田

再雇用されている人って、一応技術はあるんですよね。

石塚

電車の運転はできるってことでしょう。

安田

「半分の給料だったら雇うに値する」ってことですか。会社の判断としては。

石塚

それが適切な報酬額だってことでしょうね。職業選択の自由が認められていて、運転士の求人なんて日本全国いっぱいあるわけじゃないですか。

安田

転職活動してみれば自分の相場が分かると。

石塚

会社側も「転職市場がいまどうなっていて、あなた、この後こうなりますよ」って説明を詳しくしてあげないと。

安田

市場価値をちゃんと教えてあげるべきだと。

石塚

今はもうそういう時代ですから。「申し訳ないけれど、何かトライしないと60になって再雇用しても満額は無理だから」って。

安田

言い方を間違えるとパワハラになりそうですね。

石塚

もちろん言い方は気をつけないといけない。でも事実ですから。

安田

それが事実で、本人も納得して契約しているのに、なぜ訴える人がいるのか。

石塚

ほんの一部だと思いますよ。

安田

ほとんどの人は半分になることを納得してますか。

石塚

納得してるかどうかはわかりません。けど基本的にみなさんその制度にのってますよ。

安田

このニュースの運転士さんは特殊だと。

石塚

鉄道事業って公共性が高い分、昔から労働組合活動が激しかったから。そのなごりがまだあるんでしょうね。

安田

なるほど。

石塚

いずれにしても、裁判にお金とエネルギー使うんだったら、もっと真剣に自分のキャリアを考えたほうがいい。

安田

訴えた側が勝ったりしたら、再雇用なんて怖くてできなくなりますね。

石塚

「うちは再雇用しません。60までで終わりです」ってなっちゃう。

安田

「給料を下げるのはOK」ってことを国とは握ってるんでしょうか。

石塚

そもそも本人がその条件でOKしてハンコついているわけですから。あとから「同一労働同一賃金だ」って言うのは、どうなのかなと思う。

安田

ある意味、いちばんいい思いをしてきた人たちですもんね。

石塚

そうですよ。もっと後進に譲りなさいよと言いたい。たぶんJR九州って「ぬるま湯」なんですよ。居心地がいいんです。

安田

だから定年を過ぎても残るんでしょうね。なおかつ「給料も増やせ」ってのは求めすぎだと。

石塚

いい歳した人がおねだりばっかり。

安田

でも裁判までするってことは生活ができないのかもしれません。

石塚

それもあると思います。だから下がるのを覚悟のうえで「生活費を抑えとけ」って言ってるんですけど。

安田

なぜ抑えとかないんでしょう。

石塚

それも甘えなんでしょうね。プライドばっかり高くて。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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