第231回「学歴の価値」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第230回「替え玉受験の本質」

 第231回「学歴の価値」 


安田

全入学時代と言われていまして。

石塚

はい。選ばなければ全員が大学生になれる時代ですね。

安田

学生が足りないので、名前を書いたら入れる大学もあるらしくて。

石塚

そんな大学に「わざわざ大金を払って行く価値あるのか」って考えないと。

安田

浪人する人がすごく減ってるそうです。

石塚

そりゃそうでしょうね。経済的に厳しい家庭も多いですから。

安田

浪人して志望校に行くより、「ちょっとランクを落として現役で」という選択らしいです。

石塚

そうなりますよ。

安田

どうせ大学に行くなら、有名大学に入った方が良くないですか?

石塚

何をやりたいかにもよるんですけど。早稲田・慶應に浪人してまで入らなきゃいけないかっていったら、僕は「ノー」だと思う。

安田

早稲田・慶應でも浪人していく価値はない?

石塚

と思います。

安田

へぇ~。

石塚

 500万円ぐらいかけて「早稲田大学卒」を得る価値って、逆に何なのかってことですよ。

安田

「早稲田だったら採用しよう」という会社は、まだまだ多いのが現実でしょう。

石塚

中小企業の社長はそういうの好きですからね。

安田

そこに価値は感じませんか。

石塚

そこに500万の価値を感じるなら、浪人してもいいんじゃないんですか。

安田

早稲田じゃなかったとしても、それなりの学費はかかるわけじゃないですか。

石塚

そうですね。

安田

現役で入ったとしても数百万はかかるわけで。どうせなら早慶に入った方が得だという気がするんですけど。

石塚

それって就職のために「自分ブランドを高める」ってことと、ほぼイコールですよね。

安田

まあそうですね。

石塚

有名大学を卒業するメリットって、「新卒で優遇されるかもしれない」ことと「OBとのつながりが仕事上使える」こと。この2つだと思うんですよ。

安田

OBとの繋がりは価値がありますよね。

石塚

それこそ大学によるでしょう。

安田

早慶OBとの人脈なんてすごい価値だと思いますけど。

石塚

日本では早慶は名門だけど、世界で見たらFランク校ですから。

安田

え!早慶が世界のFランク校なんですか?

石塚

早稲田も慶應も世界のFランク校ですよ。

安田

あんなに難関なのに。

石塚

世界ランキングでは圏外です。「そんな大学あるの!?」って感じですよ。

安田

国内では超エリート校ですよね。

石塚

グローバル企業から見たら「は?」って感じでしょう。世界的にはまったくの無名校ですから。

安田

東大・京大レベルじゃないと学歴としての価値はないと。

石塚

世界的な尺度で考えるなら、日本の大学じゃなく海外に行った方がいい。もっと安く行けるし。

安田

安くはないでしょう。

石塚

日本よりぜんぜん安いですよ。たとえば台湾とか。

安田

台湾の大学のほうが、世界的に価値があるんですか?

石塚

台湾は技術力で日本を凌駕している部分がいっぱいありますから。日本人は30年前のイメージで止まってるけど。

安田

シャープも台湾企業に買われちゃいましたからね。

石塚

あるいはマレーシアの大学とか。ASEANにも名門校はたくさんあります。

安田

日本企業に入るときには不利にならないんですか?

石塚

日本でも「海外大卒をとれ」という企業が増えてきてます。

安田

それは大手でも?

石塚

大手ほどそういう傾向が強いですよ。

安田

そうなんですね。レールから外れた人を、大企業は嫌いそうな気がするんですけど。

石塚

もう時代が違いますよ。今は「海外大は採れ」という方向です。

安田

へぇ~。

石塚

「早慶上智・海外大」っていう枠があるんですよ。

安田

そうなんですか。

石塚

安田さんは海外大を出ているから、卒業の大変さがわかるでしょう。

安田

まあ確かに大変ですね。

石塚

これがね、浸透してるんですよ。わざわざ言葉の通じない異文化の国に飛び込んで、単位認定の厳しいところで卒業した。それは価値がありますよ。

安田

仮に、石塚さんのお子さんが「日本の大に学行きたい」って言ったら、「行くな」とは言わないでしょう?やっぱり。

石塚

いえ。僕は「やめておいたほうがいいよ」と言ってます。

安田

え、そうなんですか!?

石塚

はい。理想は「まず1回、高校を出たら働いてくれ」と。

安田

すごいですね。

石塚

そんな無理して浪人するぐらいだったら「1回、何年か働いてみ」って。

安田

そのあと大学に行けと。

石塚

そう。みんな知らないけど、有名大学も社会人入学をやってまして。「社会人経験1年以上で受験資格」とかあるんです。

安田

そうなんですか。

石塚

しかも社会人って入試が簡単なの。国立もありますよ。

安田

同級生に「おじさん」とか「おばさん」とか言われませんか。

石塚

ぜんぜん。1年か2年ぐらいいいじゃないですか。

安田

それを自分の子どもにって、なかなか勇気が要ります。

石塚

そうですか。1年か2年働いてみて、世の中をリアルに体感して、それから考えたってぜんぜん遅くない。

安田

他人の子ならそう言いますけど(笑)自分の子供には言いにくい。

石塚

えーっ!安田さんでも?

安田

無難な選択をする気持ちはよくわかります。

石塚

無難なことがリスクだったら勧めないでしょ?

安田

勧めはしませんけれど、本人が「そうしたい」って言ったら止めないと思います。

石塚

うちは子ども3人いますけど、「大学に行ってくれ」とは絶対に言わないし、「高校を出たら1回仕事をするのがいい」「できれば日本から出てくれ」って言ってます。

安田

「大学に行ってくれ」とは思いませんけど。できれば高校を卒業するまでに「自分で稼げる能力」を身に付けてほしい。

石塚

いいですね。

安田

大学に行くんだったら、自分で学費を払って行くぐらいになってほしいです。

石塚

すばらしいじゃないですか。でも、それだけ稼げたら「大学行こう」とは思わないかもしれないですよ。

安田

その可能性は高いですよね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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