第185回「1万本売れれば大ヒットの市場で、450万本も売れている『ネジザウルス』という小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「1万本売れれば大ヒットの市場で、450万本も売れている『ネジザウルス』という小さなブルーオーシャン」


頻繁に起こることではないのですが…。

しっかりネジを締めようとして、ネジの溝が潰れてしまったり…。
いざ、バラそうと思ったらネジが錆びついていてどうにも手が出せなかったり…。
なんとかして、さまざまな方法でネジを外そうとするものの、外れない。諦めるか、強引な手にうってでるか。

こんな経験をされた人、意外と多いのではないでしょうか?

そんな時、魔法のような工具があります。
それが「ネジザウルス」

年間で1万本売れれば大ヒットと言われる工具の世界で、すでに累計450万本も売れているメガヒット商品なんです。

価格を下げても売れなかったが、売る場所を変え、ネーミングを変えたら売れ始めた

このネジザウルスを開発したのは大阪にある株式会社エンジニア。従業員40人ほどの小さな会社です。ネジザウルスの最大の特徴は「つかむ」だけでなく、「回す」動作にも優れていること。先端部分に施された特殊な溝加工によって、絶対にはずせないと言われてきたネジをいとも簡単にはずせることができるようになったわけです。

しかし、最初から売れていたわけではないそうで…。

最初に商品化した「小ネジプライヤー」は年間で売れたのは800本ほど。ドライバーで手に負えないネジを外すというニーズは確実に存在しました。そこで、まず行なったことは価格を下げるということ。中小企業がよくあるパターンですよね。3600円から2400円にと1200円の値下げ。さらに、商品も改良し、特許も取得。それでも売れなかったといいます。

そこで打った手が「売る場所を変える」ということ。

それまではプロ用の工具を専門に扱い一般消費者向けの販路ではなかった同社が目をつけたのは、ホームセンターや金物店。パッケージデザインも変え、商品名も「ネジザウルス」に変更。すると、その年に売れたのはなんと7万本!

再現性を生み出す「MPDP理論」

その後2、3代目を発売し、順調に推移していたところにリーマンショック。状況は一変し経営危機に。しかしそこでも守りに入ることなく、お客さまの声を手がかりに、潜在ニーズを探り当てることに成功し、4代目を開発。これが大当たりします。

同社の代表である高崎充弘氏は、この当たりであることに気づきます。それが「MPDP理論」。これは、マーケティング(Marketing)、パテント(Patent)、デザイン(Design)、プロモーション(Promotion)の4要素を組み合わせたもので、成功に不可欠な要素を示唆しています。このアプローチは、中小企業が市場で競争力を獲得するためにも有用な考え方です。

というと、難しく考えがちですが、要は、ほとんどのお客さまはまだ気づいていないけど、一握りのお客さまだけが「あったらいいな」と感じていたり、「そうそう!こんなのが欲しかった」と感動されることであるということです。

この「ネジザウルス」の成功事例は、単なる商品開発の成功だけでなく、市場調査、顧客の声への耳を傾ける姿勢、現場の知恵を活用する能力など、多くの要因が組み合わさった小さなブルーオーシャンなのではないかと思います。
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株式会社エンジニア
大阪府大阪市東成区
URL http://www.engineer.jp/
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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