世界一のお金持ち方程式

イーロンマスクが世界一のお金持ちであること。これは一体何を意味しているのだろう。40年間も停滞していた月への飛行を民間で行い、いずれ火星までも到達すること。本格的な電気自動車を量産し普及させたこと。完全自動運転を実現し、人類を車の運転から解放しようとしていること。SpaceXもテスラも素晴らしい会社だと思うし、人類の未来を変える会社だとも思う。しかし実質経済に与えている影響はごく僅かだ。

量産に成功したとはいえ、テスラが販売している電気自動車の数はトヨタの足元にも及ばない。完全自動運転は実現するのかどうかも分からない。有人ロケットの打ち上げには成功したが月はまだまだ遠い。果たして火星まで到達できるのか。到達したとして、それが人類の役に立つかどうか分からない。

イーロンマスクが成し遂げたのは、ほんの小さなマーケットを切り開いたことと、とんでもなく大きなビジョンを掲げていること。あまりにもビジョンが大きすぎて達成度がすごく低いし、達成後にどんなことが起こるか計算ができない。にもかかわらずイーロンマスクは世界一のお金持ちなのである。

どれほどたくさんの雇用を生み出した人よりも、どれほど人々の暮らしを楽にした人よりも、どれほど食料の生産性を高めた人よりも、お金持ちなのである。それは人々がイーロンマスクの未来に期待しているから。もしかしたら火星に連れて行ってくれるかもしれない。もしかしたら完全な自動運転を実現するかもしれない。イーロンマスクならやり遂げるかもしれない。そういう期待もあるだろう。

だが彼をお金持ちにしているのはそういう期待だけではない。彼にベットすれば自分もお金持ちになるかもしれない。その欲望がイーロンマスクを世界一の富豪にしているのである。欲望が株価を釣り上げ、釣り上がった株価がさらに大きな欲望を釣り上げていく。この繰り返し。

人々の小さな幸せや多くの便利を成し遂げている人ではなく、成し遂げたことよりもはるかに大きなビジョンを語っている人。それが世界で一番のお金持ちだという現実。これほど面白いことはない。狂人的ビジョンは現実的成果を越えるのである。お金にならないことに興味を示さないはずの資本家。理性と努力とテクノロジーで進化した人類。その欲望と科学力の行き着く先が火星旅行である。やはり人間ほどおバカで、そして面白い生き物はいない。

 

この著者の他の記事を見る


尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)

 

感想・著者への質問はこちらから