泉一也の『日本人の取扱説明書』第29回「妖怪の国」

現代の日本は犯人探しが横行しているが、昨今の問題なっているデータ改ざんや文書改ざんは、調査しても犯人は出てこない。太平洋戦争の責任は誰にあるかとさんざん調べても、曖昧模糊としてわからなかったように、日本では「見えない存在」が意思決定をしているのだ。その見えない存在を大切にしている組織では、妖怪を感知しながらその妖怪と友達になっていくが、見えない存在を大切にしない組織では、ルールの見える化と犯人探しばかりが横行し、逆に妖怪が変化(へんげ)して妖魔となっている。妖魔にまでなると外部からゴーストバスターズを入れないと退治できない。大日本帝国にGHQが入ったように。

妖怪を「迷信」などと一蹴するような見える化の優等生君たちがエリート官僚になっている霞ヶ関では、文書改ざん妖怪やハラスメント妖怪が暴走を始め人の心を蝕み、組織を崩壊させる。そんな優等生君たちには、妖怪ウォッチをつけてあげたくなる。優等生君たちが悪いのではなく、組織に住まう妖怪が起こしているからだ。その妖怪たちを身近に感じ、そしてその妖怪の事情に共感できたら、妖魔にならず友達妖怪として味方になってくれる。組織の壁も、敵対するものではなく妖怪「ぬりかべ」として、組織を守ってくれるのだ。

どうしたら鬼太郎のように妖怪アンテナを高めることができるのか。それは、組織で困った出来事があったら、それを妖怪のように見えない存在としてキャラ化(メタファー化)し、その物語を伝承することなのである。が、その能力が高い人がリーダーになるといった日本の人事評価制度は未だ見たことがない。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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