泉一也の『日本人の取扱説明書』第42回「最大公約数の国」

とことん闘わず、お互いの立場を理解し合い、相互の共通点を探し出して着地する。合氣道がまさにこのスタンスを体現しているように見える。合氣道では技をかけられた側に「禍根」が感じられない。スコンと投げられたのにも関わらず、爽やかさを感じる。技をかけた側からは優越感を感じない。逆に技をかけさせてもらいましたという謙虚さを感じる。負けた側の爽やかさと勝った側の謙虚さ。技は互いに協力して完成したのだ。これぞ和の精神である。

闘い抜いて白黒ハッキリさせようという文化では、陰で不正をし、私欲を肥やす者たちをあぶり出すことができる。ここで正義の裁定がなされる。これは陰湿な世界にもってこいであるが、陰湿までいかない陰の世界では最大公約数的な着地が日本人には向いている。最大公約数的な着地がないまま放置していくと、いつのまにか陰湿な世界が生まれる。

元に戻るが、数学を教えなければならない先生と、数学を学ばなければならない生徒。テストの点数で白黒ハッキリさせ優劣を決めるのではなく、数学の面白さと神秘さを探し出すことに両者の着地点があるだろう。先生と生徒の最大公約数を見つけ出す。これぞ日本の教育なのである。

 

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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