泉一也の『日本人の取扱説明書』第71回「Mixの国」

なにゆえに日本にはMixの土壌があるのか。単一民族でありながら不思議である。組織風土も内向きで変化を怖れるのに。真逆の状況が身の回りにたくさんある。

ここに活性化の極意が隠されている。和洋折衷から生まれる独自の進化と発展。これは「和魂洋才」という言葉が表しているように、和魂が肝にあるのだ。

和魂の真髄。それは「正反合」のあり方である。違ったものを受け入れて独自の化合物を作ってしまうスタイル。日本ではこの正反合の心意氣ある者たちが、独自の文化を生み出してきたのだ。

和魂は、閉鎖的で内向きの環境にいて始めて価値となる。オープンでフランクな環境では、和魂は活きない。化学反応を起こすには「高温」「高圧」といった厳しい条件が必要なように。つまり、日本の組織風土が土壌となって、和魂が輝き「合」といった独自の価値が出現したわけだ。まるでイジメられ、虐待された者たちが、イジメや虐待の本質を探求し始めたことで心理学が発展したように。

和魂の「種」は日本人の皆がもっている。それは日本語であり日本の四季折々の風土、衣食住に芸術といった伝承文化である。そして和魂の種が育つ閉鎖的で内向きの土壌がある。ただ、光と水がない。光と水があれば和魂の種が育ち、実となる。では和魂の種を育てる光と水とは何か。

光とは「智慧」である。水とは「愛」である。智慧と愛が光と水であるが、説明したらえらく長くなるので、ここでは三種の神器にたとえておく。光・智慧はつるぎ(天叢雲剣)、水・愛はまがたま(八尺瓊勾玉)、そして土壌はかがみ(八咫鏡)である。この3つが揃ったとき、和魂の種が育ち、独自の果実を実らせるのだ。

「令和」とはまさに和魂の果実を実らせる時代なのである。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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