人間は疑問や質問を前にすると、立ち止まる習性がある。
「?」を見かけると、つい考えてしまう。
答えを探してしまう。
その習性を利用して、広告物の多くは作られている。
たとえば電車の中刷り広告や、
Facebook広告に使われる「なぞなぞ」は、
その最たるものである。
質問を投げかけ、答えさせることによって、
広告の世界に引き込んでいく。
ここで大事なのは、程よい質問であることだ。
簡単すぎず、難しすぎないこと。
見た瞬間に答えが分かる質問、
たとえば「1+1=?」では考える気にすらならない。
反対に、難し過ぎる質問もNGだ。
20〜30秒考えて、答えの糸口すら
見つからないような質問は、そのままスルーされてしまう。
何しろ現代人は忙しいのだ。
数多くの情報の中から、自分の時間を割くべき情報を、
選び取らなくてはならない。
程よく考えさせ、気持ちよく答えが見つかる質問。
それが良い質問なのだ。
程よく考え、気持ちよく答えを見つけ出せば、
人はそれを記憶し、語りたくなる。
「ねえねえ、あの広告見たことある?」
と広めてくれれば、しめたものである。
もちろん広告は、そんなに単純なものばかりではない。
一見、質問に見えないものもある。
たとえば、「1+1=2ではない世界」
というキャッチコピーを見ると、
「え?それはいったい、どういう世界なんだ?」
と自分で質問を作って、考えてしまう。
その後のオチが面白ければ、
読んでいる人は「なるほど!」と膝を叩いてくれる。
そして、自分が解いたわけでもないのに、
その答えを自慢げに人に言いたくなる。
質問→思考→答え(納得!気持ちいい!)
というパッケージによって、
人の行動は上手くコントロールできるのである。
広告だけではない。
企画書も、講演プログラムも、商品LPも、
効果が高い(行動に結びつく)ものには、
このパッケージが使われている。
たとえば出来の悪い企画書は、単なる商品の説明に過ぎない。
「我が社の商品はこんなに素晴らしいです」と羅列されても、
聞く側は辟易するだけである。
そこで登場するのが、先のパッケージである。
興味深い質問を投げかけ、相手に答えを見つけさせ、
気持ち良くさせる。
気持ちよくなった所で、更に次の質問を投げかけ、
気持ちよく解いてもらう。
次々に質問が現れ、気持ちよく答えを出しているうちに、
気がつけばその商品が欲しくなっている。
それが出来の良い企画書というものである。
出来の良い講演も、出来の良い書籍も、構造はまったく同じ。
読者や聴講者は、疑問を持つ。
その疑問に、気持ちよく答える。
あるいは、気持ちよく、答えに導く。
重要なのは答えを教えることではない。
ましてや、答えを押しつけてはならない。
答えに導くこと。
出来れば自分自身で、気持ちよく答えに辿り着いてもらうこと。
人は自分が見つけた答えに、自分の行動を左右される。
そして、それを人に言いたくなる。
相手の頭に「?」をつくり出し、
それを気持ち良く解かせること。
それがビジネスの基本なのである。
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