生きていくため、
最低限の生活をするために必要なもの。
それが必需品である。
生きるためには必要ないが、あると楽しい。
だからちょっと無理しても買いたい、持っていたい。
それが嗜好品である。
嗜好品は一般的には贅沢品という認識ではないだろうか。
たとえば命をつなぐ食料や寒さをしのぐ衣服などは
必需品と言えるだろう。
一方でポルシェやシャネルのバッグなどは嗜好品である。
ではエアコンや冷蔵庫、携帯電話などはどちらだろう。
必需品と嗜好品の境目を考える時に重要なこと。
それは境目が移動しているという事実である。
車やエアコンが普及していない時代には、
それらを持つことは生きていくための
必須条件ではなかった。
だが今では、それがないと生活できない人もいる。
生きることの定義や最低限の生活のレベルは、
時代によって変化するのだ。
真夏のエアコンや地方都市での自家用車、
仕事に必要なスーツや革靴、
社会とつながるためのパソコンやスマホ。
それらはもはや現代の必需品なのである。
反対のことも起こる。
囲炉裏や土間はかつて必需品であったが、
今では嗜好品である。
今、それは必需品なのか。
それとも嗜好品なのか。
境目の移動を見極めることは
経営の必須スキルなのである。
では社員はどうだろう。
人手不足倒産が激増するといわれている今、
社員は会社にとっての必需品なのだろうか。
社員がいなければ会社は成り立たない。
盲目的にそう思い込んでいるのだとしたら危険である。
境目はすでに移動してしまっているかもしれないのだ。
事実、大企業はどんどん社員を減らしつつある。
リストラ資金を蓄えて早期退社を募る。
新たな採用を抑制する。
機械とAIに置き換えられるものは置き換え
必要最低限の人数だけを残していく。
そう遠くない未来に、経理も営業も管理も製造も
人間がやらなくなる日が来るかもしれない。
では中小企業はどうだろう。
その多くは労働集約型だ。
社員がいなければ仕事を回すことができない。
そう考えている経営者がほとんどだろう。
だがそれは事実なのだろうか。
高止まりする採用コスト。
反比例して一人当たりの収益は落ちている。
会社は解雇できないが従業員は好きなときに辞めていく。
辞めないように社員をいたわり、
飲み会でも社員に気を遣う。
それでも社員が増えていくことを喜ぶ社長は多い。
もはや社員は必需品ではなく、
社長にとっての嗜好品なのである。
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