65歳までの雇用延長が義務化される。
おそらくその先は70歳までの延長だろう。
国からの補助金は打ち切られ、企業は自らの努力で
人件費増を賄っていかなくてはならない。
人を雇用し、育て、利益へと結びつけるのは、
企業に課された責任である。
政府が言いたいのはそういう事のようだ。
いや、政府だけではない。官僚含め
この国を動かしている多くの人が
そう考えている。
というより考えざるを得ないのだろう。
何しろ国には余裕がない。
年金の支払いをできるだけ遅らせ、
その費用を企業に負担させたいのだ。
気持ちはよく分かるが、
企業にはもはやそんな余裕はない。
国を代表する大企業ですら、
早期退職募集が増えていくばかりだ。
45歳を過ぎた使えない人材はもう要らない。
雇い、育て、収益化するのが企業の責務である。
雇われ、育てられ、収益に貢献するのが
国民の責務である。
冷静に考えれば驚くような構図であるが、
誰も疑いを持たないままこのシステムは続けられてきた。
それが成り立ったのは、
持ちつ持たれつの共依存関係があったからである。
人を雇い、育てていけば、企業の収益は増えていく。
会社に雇われ、言われた仕事をこなしていけば、
収入は増えていく。
企業が儲かり続け、
社員の報酬を上げ続けることができれば、
この関係はずっと続いていくことだろう。
だがその期間は終了した。
社員を増やすことによって、
収益を拡大するという事業モデル。
会社員になることによって、
人生を安泰なものにするという人生モデル。
その両方が終了したのである。
別に驚くようなことではない。
ひとつの収益モデルが終焉を迎えた。
ただそれだけのことである。
問題なのはその現実を受け入れられないことだ。
企業にすがりついても、国に訴えかけても、
老後の人生を保証してもらうことはできない。
社員を雇い、育てるだけでは、
収益を増やしていくことができない。
国が守るべき老後の人生を、
押しつけられるほどの体力が企業にはない。
国も企業も国民も、
現実を受け入れるべき時なのである。
人と会社の関係は変化した。
まずここを認めなくてはならない。
会社は社員の人生を保障することなどできないし、
社員は保障もない会社に人生を預けることなどできない。
共依存の関係を見直し、
お互いを自立した関係へとシフトさせていく。
会社に頼らず、社員の忠誠心に頼らない、新しい関係。
それ以外には道がないのである。
尚、同日配信のメールマガジンでは、コラムと同じテーマで、より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」と、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。全て無料でご覧いただけます。
※今すぐ続きを読みたい方は、メールアドレスとコラムタイトルをお送りください。
宛先:info●brand-farmers.jp (●を@にご変更ください。)