セールスをなくすセールス

マーケティングとは
セールスをなくすことである。
と、ドラッカー氏は定義している。
とても分かりやすい定義である。
そしてここには我々日本人との
決定的な感覚のズレがある。

多くの日本人にとってマーケティングや
セールスは営業活動の一環である。
だから営業マンにはこのような指示を出す。
「もっと工夫して売り上げを伸ばせ」以上。
売れない営業マンが続出してしまう
最大の理由がここにある。

何をどう工夫するべきなのか。
それを自分で考えさせることのどこが間違っているのか。
たとえばコンビニのバイトに「工夫して売り上げを
伸ばせ」と指示したらどうなるだろう。
おでんや肉まんなどの新商品を開発して
売り上げを伸ばしてくれるだろうか。
そんなことのあろうはずがない。

あろうはずがないことを営業マンには指示してしまう。
それは営業マンが正社員だからか。
あるいは自社の社員が特別優秀だからか。
いや違う。上司が考えていないからである。
営業とは何なのか。
まずここを徹底的に考えなくてはならない。

顧客が要らないというものを
無理やり買わせる行為なのか。
それとも顧客に自ら
欲しいと言ってもらう行為なのか。
定義によって工夫すべきことは180度変わる。

マーケティングとは何なのか。
セールスとは何なのか。
ひとつひとつを定義していくことによって、
何をどう工夫すべきかが明確になる。

マーケティングとはセールスをなくすことである。
そう定義するなら、マーケティング担当は
セールスの要らない仕組みを考えなくてはならない。

では営業マンは必要ないのか。
それは営業マンの定義次第である。
私がマーケティング担当なら、セールスの要らない
仕組みの中に営業マンを入れてしまう。

それだとセールがなくならないではないか。
そう考える人は営業マンの定義を間違えている。
私ならこう定義する。
「営業マンの仕事はセールスをなくすことである」と。

では営業からセールスを取ったら何が残るのか。
それはセールスしないセールスマンである。
冗談で言っているのではない。
現にトップセールスと呼ばれる人たちは
それをやっている。

営業トークは売るためにあるのではない。
買いたいと言ってもらうため、
すなわち売らないためにあるのだ。
この違いが分からない人は残念ながら営業センスがない。
買いたくなるロジックを練り、
相手に合わせて微調整する。
それこそが営業マンの仕事なのである。

 

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