最先端の場所

日本はもはや先進国ではない。
一人当たりの生産性は最下位であり、
収入は何十年もずっと横ばいであり、
税金は増え社会保障は下がり続ける国である。

やりたくない仕事は外国人にやらせればいい。
外国に工場を建てもっと安く作らせればいい。
外国人が生み出した利益を享受し、
日本人は好きなことをやって暮らせばいい。
などというバブルはとっくに弾けてしまった。

こんな稼げない国に外国人は来ない。
来るのは消費とレジャー目的の観光客だけだ。
今や出稼ぎに行くのは日本人。
そして安い賃金で外国人のおもてなしを
するのが日本人の役目なのである。

だが私はこのような現実に全く悲観していない。
バブル期のような成長し続ける日本を取り戻す!
などとはこれっぽっちも思わない。
この非国民め!と言われそうだが、これが現実である。

欧米列強の真似事をした植民地合戦では負け、
金儲けゲームでも最終的には負ける。
それでいいじゃないかと私は思う。
他人よりも強く、他人よりも金持ちであることが、
幸せとは限らない。人は人、自分は自分である。
自分の身の丈にあった豊さで十分ではないか。

アジアの国々ではどんどん経済が発展している。
国が豊かになり、国民も豊かになり、
人件費も上がっていく。
中国が高くなり、東南アジアに移った工場は、
次はどこへ向かうのか。アフリカだろうか。

いずれにしても最終的には
省人化・無人化に行き着くだろう。
では人間にはどのような仕事が残るのか。
嗜好品や工芸品などの製造。
あるいは人にしかできないサービスである。

この人の手作業で仕上げて欲しい。
この人の手料理が食べたい。
この人の接客サービスを受けたい。
人間であるが故の非効率が生み出す価値。
日本人にはこういう仕事がとことん向いている。

安いし、丁寧だし、治安はいいし、
街は綺麗だ。観光客は喜ぶし、
世界の仕上げ仕事は日本に集まってくる。

円安でいいじゃないかと思う。
海外旅行には行けない。
外国の高級ブランドも買えない。
だが国内で暮らすには不自由しない。

仕事は安定し、顧客から喜ばれ、日々汗をかく現場国家。
中小企業が生産性を下げていると主張する人もいるが、
生産性の高い仕事では日本人は食えないのである。

世界から見れば安いけど、日本人にとってはいい仕事。
そしてやりがいのある仕事。
この先、世界人口は確実に減少に向かう。その中で
日本は世界最先端の成熟国家となっていくだろう。

 

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