5年で確実に市場価値が上がる。そういう仕事にしかもう人は集まらなくなるだろう。若者は終身雇用など信じていないし、それで人生が安泰だと考えてもいない。彼らは至極真っ当である。着実にスキルを身につけ、自ら人生のキャリアを築いていこうとしている。
会社に人生を委ねてきた人には異星人に見えるかもしれない。だがちょっと俯瞰して見てみれば、どちらがまともなキャリアか理解できるだろう。片や「使えない人材、リストラ対象、無駄メシ喰い」と言われても会社にしがみつくしかない人生。片や、複数の会社から常に求められ続ける人生。
今さら軌道修正できない50〜60代には選択の余地はない。だがこれから人生をスタートさせる若者なら後者を選ぶのは当然ではないか。給料や休みはもちろん大事なポイントである。だが最大のポイントはキャリアアップであることを忘れてはならない。
経営者は自分の胸に手を当てて考えてみるべきだ。自分が20代なら自社を選ぶのかどうかを。5年で確実に市場価値が上がると断言できるのかどうかを。若者は目先の給料のために働いていない。もっと将来を見据えて、価値あるスキルが身に付く職場を探している。より具体的なスキル。よりマーケットニーズの高い価値。これを提供できるかどうかが組織づくりの鍵となっていく。
何度も言っているようにすべての社員は必ず辞める。卒業前提で組織を組み立てるべきだ。スキルと市場価値を身につけた人が卒業することで、ここで学びたいという人が増えていく。この流れを生み出さない限り採用コストは上がり続け、人材クオリティは下がり続ける。社内出世などというまやかしはもう通用しないのである。
はっきり申し上げよう。頑張ったご褒美に昇進させることをもうキャリアアップとは言わない。そんなものをキャリアだともう誰も信じていない。だから無意味な昇進を拒絶するのである。そんな暇があれば自分のスキルを磨きたい。これがまともな人の発想である。
出世して管理職として高い報酬を得たい。これはまともな人の発想ではない。管理職とはマネジメントスキルを身につけた人が就くべき仕事だ。現場で頑張ったご褒美として与えるべきポジションではない。昇進ではなくスキルアップ。このマーケットニーズが理解できない経営者はもう引退すべきなのである。
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1件のコメントがあります
経団連も老団連(一部企業を除く)化し、日本の大企業の成長鈍化/低下(一部を除く)の理由一つは、①その経営者の質が落ちた(サラリーマン社長化/リスクを取って世界にチャレンジしないこと、業界会合ではゴルフや勲章の話しで上がりの経営者連中)ことに加え、コラムの内容に象徴されるような人事や労働慣行の変化対応ができないことだと思います。