自由の境目

この人でなければ出来ない。
そういう重要な仕事こそ社員に任せたい。
いや、社員とはそういう存在であるべきだ。
私も過去に経営者をやってきた経験があるので、
この感覚はとてもよく分かる。

だが現実はどんどんそれが難しくなっている。
いわゆる労働法の壁があり、働き方改革の流れもある。
社員は守るべき存在なので、
残業は規制してゆっくり休ませるべきだ。
無理をさせない、長時間働かせない、
無茶な要望はしない。

そうなって来ると、社員がする仕事には
「変わりが効く人」を常に用意しておく必要がある。
つまり、その人にしか出来ない仕事など、
頼みようがないのである。
私にしか出来ない仕事だけど定時になったので帰ります。
休日出社は出来ません。これでは会社は回らない。

何度も申し上げてきたが、社員には
「代わりが利く仕事」を任せるしかない。
代わりが利かない仕事、その人でなければ出来ない
仕事は、外部のプロフェッショナルに頼むしかない。
プロに外注すれば成果はコミットされる。
徹夜しようが休みが無かろうが関係ない。

結果が出なければ次から頼まなければいいし、
条件が悪ければプロ側が受けなければいい。
Win-winの関係がここに出来上がるのである。
ローリスク・ローリターンの仕事は社員に。
ハイリスク・ハイリターンの仕事は外部人材に。
これが常識となるだろう。

ではそうなった時に
自由を得るのはどちらの人材だろうか。
代わりが利く仕事は交代もできる。
だから残業しなくてもいいし休みもしっかり取れる。
とても自由な働き方に見える。

だが代わりが利くということは、
その人じゃなくてもいいということでもある。
この条件で、この給料で、やってください。
その条件で受ける人が他にもいれば、
条件交渉もできない。これは不自由である。

一方で代わりが利かない仕事はどうだろう。
受けた仕事は自分がやり遂げなくてはならない。
期日も守らなくてはならない。
休みや睡眠を削らなくては納品できないかもしれない。

だが自分しかできない仕事なら条件交渉ができる。
私はこの価格でこの納期でないと受けません。
どうしてもその人にやって欲しければ
発注側は条件を呑むしかない。

代わりが利く人の自由と不自由。
代わりが利かない人の自由と不自由。
どちらの自由を選び、どちらの不自由を受け入れるのか。
ここを自分で決めるしかない。自由とは
不自由と引き換えにしか手に入らないものなのである。

 

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1件のコメントがあります

  1. 選択の自由と不自由、正社員と業務委託の責任(信頼)の度合いの逆転現象、言い得て妙だと感じました。コラムありがとうございます。

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