プラスとマイナスの境目

求人も集客も一筋縄ではいかない時代になった。その最大の理由は情報リテラシーの飛躍的成長である。ショッピング、就職、娯楽、投資、結婚、などなど、玉石混交あらゆる情報がスマホには溢れている。その中から本物を見極め、限られた資源の使い道を決めなくてはならない。お金にも時間にも余裕がない現代人は、生きる術として高い情報リテラシーを身につけたのである。

個々の能力はもちろん、それをシェアすることによって集合知を極限まで高めている。ほんの少し前まで広告の効果は絶大であった。しかし今それが通用するのは高齢者層のみである。現代人は基本的に広告を信じない。信じるのは近しい人の口コミや集合知としてのユーザー評価である。なぜなら広告には肝心のことが書かれていないから。

何か買い物をするとき、次の職場を探すとき、ユーザーが最も欲しているのはマイナス情報である。この商品はここがイマイチである。この会社はこの部分が最悪である。そういう情報があればユーザーは冷静に商品や会社を選ぶことができる。では星5つで満点評価の商品や会社はどうだろう。

怪しい。それが本音だろう。どんなに素晴らしい商品や会社にも必ずマイナス部分はある。それが見えないのは怪しい。逆にマイナス部分が明確であればユーザーは信用する。この心理をちゃんと把握しておかないと、求人や集客は失敗してしまう。振り返って自社の商品サイトや求人広告を見てみよう。そこにマイナス情報は書かれているだろうか。

もしプラス情報しか書かれていなければ残念ながらユーザーには響かない。いかに泥くさい仕事なのか。どういう理由で人が辞めていくのか。いかに無駄なこだわりを持った商品なのか。どういうユーザーの評価が低いのか。ここをきっちりと書いておくことでユーザーの信用度は上がる。もちろんマイナス面が気に入らない人はここで離脱する。

だがマイナス面を気にしない人は残る。そしてプラス情報を信用してもらえるようになる。何があって何がないのか。どういう人にとっての良い商品で、どういう人にとっての良くない商品なのか。どういう人に向いていて、どういう人に向いてない職場なのか。マイナスの中に浮かび上がるプラス。これが人を惹きつけるポイントとなる。私たちは欠点のない人間に惹かれるのではない。欠点の中に埋もれた魅力を見つけたときに心惹かれるのである。

 

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1件のコメントがあります

  1. 今度、採用募集する際、マイナス面も記載するようにします。大変、参考になりました。

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