日本には中小企業が多すぎると言われている。その割合は99.7%。しかし日本だけが特殊なわけではない。実はどの国も中小企業の割合は99%台であり経済の重要な担い手となっている。ただその規模は概ね250人〜300人で日本に比べて零細企業の割合が少ない。つまり日本は零細企業が多すぎるのである。
スケールメリットが全く活かせない規模であり、完全な労働集約型事業であること。それが零細企業の特徴だ。受けた仕事を従業員にこなさせることで利益があがる仕組み。つまり受注額と人件費の差額でしか稼げない会社。こういう会社が日本には山ほどあり、生産性アップを阻害しているというわけだ。
ではこのような零細企業は今後どうなっていくのだろう。私の予想は二極化である。まず零細企業の大半は倒産もしくは吸収により姿を消すだろう。その引き金になるのは人不足である。初任給30万円、最低賃金1500円はあと数年で現実となる。これを下回る会社はもう新たに人を雇うことができない。
問題は今いる人材である。中小企業の割合は99.7%であるが実は従業員数では69.7%しかいない。この7割の生産性が問題なのだ。収入を増やすために彼らは大移動を始めることになる。同じ中小企業でもより大きな会社、より生産性の高い会社に流れていく。その結果、社員がいなくなる会社が出てくる。
転職するだけで年収が100万円増える。こうなると人の流れは止められなくなる。会社への愛着や情があるベテラン社員といえども、家族を養わなくてはならない。手取りが減って物価が上がる現実には抗えないのである。こうやって生産性の低い零細企業はどんどん姿を消していくことになる。
一方、新たな形の零細企業も出現すると予想している。それは社長がひとりで、もしくは親族数人でやる会社。親族以外の従業員は雇用せず自分(たち)だけで完結するビジネス。これが一定数まで増えると予想する。雇われたくない人は一定数いるし、自分の食い扶持くらいは稼げる人がいるからである。
結果的に中途半端な規模の零細企業は無くなっていくだろう。ある程度の規模でスケールメリットが活かせる中小企業、少ない人数でも高い生産性を維持できる中小企業、そして社長と親族だけの会社。ここに集約されていく。この流れを止めることはできない。できるのはどの道を行くか選ぶことだけ。
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