変と不変の取説 第66回「オスはもう要らない」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第66回「オスはもう要らない」

前回、第65回は「本当の味方は誰なのか」

安田

欧米では「白人男子の精子の数」がどんどん減ってるそうです。

え!そうなんですか?

安田

はい。実は日本でもどんどん減ってて、原因がわからないらしいんです。

遺伝子組み換え食べ物とか、いろいろ言われてますよね。

安田

個人的には自然の摂理かなと思ってまして。

ほう。

安田

ライオンみたいな強い動物って、たくさん子どもを産まないんですよ。数が増えすぎちゃうので。

そうですね。

安田

逆にマンボウみたいな、すぐ食べられちゃう動物はたくさん子どもを産む。生物として強くなると精子が減るのかなって思います。

人間は滅多に死ななくなりましたからね。

安田

はい。死ななくなったので人類が増えすぎた。だから自然の摂理なのかなって。

私もそこは同意です。

安田

おお。泉さんも同意ですか。

人類の終焉みたいな。

安田

ただ白人男子の精子減には、ちょっと実感がわかないですけど。

白人男子は人類の中でも特に強いじゃないですか。

安田

まあ、そうなんですけど。実感としては日本男子の精力ダウンの方がしっくりきます。

確かに。白人男性は精力的なイメージですよね。

安田

はい。彼らはギラギラしてるイメージなので、実感がわかない。

「だんだん男がいなくなる」っていう現象かもしれません。

安田

え?どういうことですか。

もともと生物って女だけだったんですよ。

安田

聞いたことがあります。他の個体と遺伝子を混ぜるためでしたっけ?

そう。遺伝子をミックスさせて、多様性を生み出すためにオスがつくられた。

安田

メスとメスの掛け合わせをするために、横糸的にオスが生まれたんですよね。

そうそう。

安田

アダムからイブが生まれたわけじゃないと。

生物学的にはイブからアダムが生まれたということですね。

安田

元をたどればみんなメスだったと。

もう要らないんじゃないですか、オスは。十分多様化したので。

安田

なるほど。もうオスの役割は終わったと。なんか悲しいですね。

そういう宿命なんですよ。

安田

主役はあくまでメスだと。

メスがいないことには子孫が残せないですから。

安田

確かに。でも多様性は十分だと言えるんですかね。

じつはオスの遺伝子って、だんだん削られて減っていってるらしいです。

安田

なんと!

で、何百万年後には「生物学的にオスがいなくなる」って言われてる。

安田

でも、オスがいなくなると多様性は完全になくなりますよ。単なるコピーの連続になってしまう。

元々「オスが誕生した理由」ってそれですからね。

安田

ですよね。じゃあやっぱりオスは必要なんじゃ?

進化によって新たな遺伝子操作が生まれるのかも。ランダムに遺伝子を組み替えていくとか。

安田

メスだけで組み換えが可能になるってことですか?

そういう方向に進んでるんじゃないですか。

安田

オスはいないほうがいいんですかね。

不要だってことになったんじゃないですか。要らんことばかりするし。

安田

確かに。戦争とかいざこざを起こすのはいつもオスですもんね。

まあ正直なところ理由は分からないんですけど。オスの遺伝子が削られて、世代を超えてなくなっていくのは事実です。

安田

オスの遺伝子だけが削られてるんですか?

はい。オスだけ。ちょっとずつY染色体が削られてるらしいです。

安田

なんか神の意志を感じますね。

感じますか(笑)

安田

人のことは言えないんですけど、新橋あたりで「つまようじをシーシー」やってるおじさんを見てると、なんか不要だなって感じます。

(笑)

安田

電車で横にいても汗臭いし、幅取るし、つまらんシャレばっかり言ってるし。自分もオッサンなので、ほとほと嫌になってきます。

自分のことも嫌になってくるっていうね。

安田

泉さんはどうなんですか。“オッサン不要説”については。

さっきもミーティングでその話があったんですけど。「オッサンを活性化しないと大企業はあかんよね」みたいな。

安田

活性化できますか?オッサン。

オッサンに役割を与えないと、どんどんダメになっていくんです。過去の自慢話ばっかりするし、邪魔くさい。頭のカタい“異物”みたいになってしまう。

安田

実際そうなってますよね。そこら中で。

はい。会社のお荷物になって行ってる。

安田

会社だけじゃないですよ。頭がカタいだけじゃなくて、存在が美しくない。

オッサンを美しくするのは難しいですね(笑)

安田

たとえば同じオッサンでも、オッサン犬はまあまあ可愛いじゃないですか。

ご飯食べたあとに、つまようじでシーシーやりませんから(笑)

安田

「タバコを吸っちゃだめ」って言ってるのにタバコ吸うし。頭が固いというか、わがままというか。

年を取るほど鈍感になっていくんですよ。人の目にも鈍感になって、世の中の変化にも鈍感になって。

安田

なんか物体として劣化していってますよね。自分でも嫌になりますけど。

本当は「言葉に重みが出てきたり」「味が出てきたり」“いぶし銀”みたいなおじさんが美しいんですけど。

安田

仕事以外でも、彼らのセンスを磨く方法ってないんですかね。もうちょいオシャレするとか、もうちょい周りに気を遣うとか。

やっぱり環境を変える必要がありますよ。いまの環境に安住しちゃってるので。

安田

会社でのおじさんって、女性社員から厳しいこと言われないんですか?

女性社員はもう、そういう面倒なおじさんには関わらないようにしてる。

安田

もう邪魔くさいから無視すると。じゃあ家ではどうなんですか?

家族も嫌がってますから。

安田

家族にも嫌がられてますか。なんか可哀想ですね。それでも本人は変わろうとしない?

「会社で俺はどれほど力があるか。コイツらぜんぜんわかってない」みたいな。

安田

もう会社からも追い出されそうですけど。それで早期退職とか定年になった瞬間に、妻から離婚状を叩きつけられるんですよ。

1回ぜんぶ失わないと目が覚めないんですよ。

安田

確かに。私も失って目が覚めました。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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