ルールに隠された意図を読め!
第1回「労働法改革と政府の本音」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第1回「労働法改革と政府の本音」


安田

労働法改革って、つまりは何なんですか?

久野

「日本を豊かで幸せにする改革」と安倍さんは考えているんでしょうね。

安田

それはつまり「1人あたりの生産性を上げる」ってことですよね?

久野

そうです。1人あたりの生産性は現在21位ですから。

安田

先進国で21位ですか?

久野

そうです。1人あたりの生産性はG7の中ではずっと最下位です。

安田

でもGDP総額なら世界3位ですよね?

久野

そうです。確かに、国家の力っていうのは「1人あたりの生産性」ではなくて「GDPの総額」なんですよ。

安田

そうですよね。なのになぜ、そこまで「1人当たりの生産性」にこだわるんですか?

久野

政府がこだわっているのは、あくまでも総額としてのGDPだと思います。それこそが国力を表す数字であり、政府の力でもありますから。

安田

そうですよね。

久野

ただ、その数字を維持して行くすべがないんですよ。単純に、人数が減って行きますから。だから国力が維持できない。

安田

国力っていうのは、国際社会における日本政府の影響力でもありますよね?

久野

そのとおりです。だから彼らはその数字にこだわるわけです。

安田

ちなみに、国力というのは、具体的にはどう影響するんですか?

久野

たとえば世界には「日本語を使ってる人」って、すごく少ないですよね?

安田

はい。

久野

じゃあ、なぜわざわざ日本に来て、この面倒臭い日本語を使って商売をしてるのか?

安田

やっぱりGDPが大きいからですか?

久野

そうです。実際、GDPが小さい国は、英語に支配されちゃってますよね?

安田

そうなんですか?

久野

「英語使えよ、おまえら」「使わないんだったら商売しないぞ」みたいな感じで、英語を使わされてる。

安田

なるほど。でも日本は違うと。

久野

日本くらいのGDPがあると「日本で商売したいな」と思ってくれるので、無理してでも日本語を使ってくれる。

安田

なるほど。

久野

言い換えれば「大きいから相手にしてくれる」ということ。だから、小さくなったら相手にされない。

安田

ということは「1人ひとりの幸せ」というよりは、国家としての力関係を考えてGDP総額を維持したい、そのために生産性を上げたいと?

久野

上げるしか、ないんです。他に方法がないので。

安田

なるほど。上場企業の社長が時価総額で評価されるように、国家元首はGDP総額で評価されるわけですね?

久野

そうです。

安田

だから、これは「絶対にやらないといけない」ことだと。

久野

政府としたら、絶対に譲れないラインでしょうね。

安田

なるほど。それで政府は「1人あたりの生産性」を上げるために、何をやろうとしてるんですか?

久野

労働法の改正です。

安田

まず「残業をやめろ」。そして「休みを増やせ」と。

久野

はい、そのとおり。

安田

でも、そんなにすんなり行くんですか?

久野

行かないでしょうね。

安田

ですよね?

久野

だから無理やり、行かせるんですよ。

安田

どういうことですか?

久野

まず、新しいルールを決める。

安田

新しいルール?

久野

はい。サッカーに例えるなら、これまでは「何時間でもいいから点が入れば勝ち」というルールだったわけです。

安田

なるほど。そのルールが変わると。

久野

はい。「この時間内に点が取れなければ、負けです」というルールに変わった。

安田

も、いきなり「ルール変更」なんてズルいですよね。

久野

じつは元々、労働法っていうのは、こういうルールなんですよ。

安田

え!そうなんですか?

久野

はい。ただ誰も、守る人がいなかっただけ。

安田

どうして、守らなかったんですか?

久野

罰則がなかったからです。

安田

なるほど。「赤信号を歩いて渡る」くらいの感覚だったんですね?

久野

まあ、そんな感じです。

安田

では、罰則が強化されると?

久野

はい。指導に強制力もありますし、逮捕されるケースもあります。

安田

恐ろしい。

久野

それだけ政府は、本気だということです。

安田

もう、見逃してくれないと?

久野

はい。

安田

でも、厳しくなったからって、守れるんですかね?そのルール。

久野

いや、無理でしょうね。2〜3割の会社は、どう考えても守れないです。

安田

だったら、どうすればいいんですか?

久野

だから、「このルールで経営できないなら、やめてください」ってことですよ。

安田

え!潰してしまう気ですか?

久野

まあ、もう少し柔らかく言えば「潰れてもいいよ」ってことです。

安田

そんなの、柔らかく言ったって同じですよ!

久野

そうですね。でも柔らかく言ってるから、多くの経営者は気がついていない。

安田

絶対に気がついてませんよ。そんな一大事だなんて。

久野

あと半年もしたら、みんな焦り出しますよ。

安田

どうしたら、いいんですか?まずは、残業代をちゃんと払えば大丈夫ですか?

久野

それすら払ってないところが、ありますからね。

安田

「残業代なんか払ったら潰れるよ」みたいな会社、周りにたくさんありますよ。

久野

もはや、そんなレベルは論外ですね。

安田

論外ですか?

久野

はい、残業代を払うのは当然として、まずはその時間の管理です。

安田

どう管理したら、いいんですか?

久野

30分単位で残業をつけるとか、本来だめなんですよ。法律は。

安田

え!そうなんですか?

久野

本当は1分単位でつけないといけないんです。

安田

1分単位!

久野

だって今は、会社によってマチマチじゃないですか。6時に仕事終わって7時から残業つける会社もあれば、1分単位でつけてる会社もある。

安田

確かに、かなりマチマチですね。

久野

会社によって、ぜんぜんルールが違う。だから、まずこれを統一する。

安田

なるほど。すべての会社が1分単位になると。

久野

そうです。

安田

そういうルール改正って、顧問社労士さんはしっかり教えてるんですか?久野さんは教えてるんですか?

久野

もちろん教えてます。ただ、「1分ですよ」「30分ではダメですよ」って言うと「融通が利かない社労士」みたいに思われることもありますね。

安田

確かに。そういう社長多いですよね。「税金をちょろまかしてくれるのが、いい税理士だ」みたいな。

久野

社労士にも「労働法をユルくする」とか「すり抜けるコツ」みたいなのを、期待してる人は多いです。

安田

でも、それはもう無理だと。

久野

これは何度も言ってるんですが、今回は政府は本気ですから。

安田

本気で潰しにくる?

久野

潰れてもいいよ、と。

安田

だから、柔らかく言っても意味ないです。

 


久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は地元である岐阜県多治見市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

中小企業が抱える
三重苦(採れない、辞める、生産性が低い)を、
三重丸(採れる、辞めない、生産性が高い)へ。
6つのステップで支えます。

感想・著者への質問はこちらから