泉一也の『日本人の取扱説明書』第24回「在り方の国」

一方、江戸時代は大水害、大干ばつが何度となくあったが、奪い合いの内乱は起こらず、協力し乗り越えてきた。自然災害に対しては協力したが、打ち壊しといって強欲な商人や強権な役人に対しては民衆が立ち上がった。そこでも、打ち壊しの多くでは、略奪をせず、火を放たないというような社会的な暗黙の了解があったようである。

現代のグローバル経済では、上場企業がその中心にあり、彼らは常に株価と利益と多くの社員の給与支払いに縛られている。よって必然的に、行動と結果に価値を置き、結果がでない社員はクビを切り、競合他社を出し抜いて勝ち組にならんとする。そして、子供達は上場企業に入社せんがために、大事な若い時代を過ごす。このグローバルな「動」の世界を静かに俯瞰した時、自分がどう在り、生きるのかを選択できるような目を養うことが教育の目的であるはずが、教育自体が成績を上げるという「動」に侵されている。

もし、「動」を俯瞰する「静」の目を養う教育をしたなら、グローバル経済に取り込まれた企業に入社を希望する日本人は激減するだろう。かっこ悪いと感じるからだ。その時こそ、目利きとなった人々が勝ち組文化を打ち壊し、新たな「在り方」の文化を築き始める。

ここまで読んで「泉さん、言いたいことはようわかったが、わたしゃあ何をすべきなのか?」と思ったなら、最初から読み直して欲しい。行動に目を向けるのではない。『自分は日本人としてどう在るのか』と静かに問う。この静かな問いが佇まいを美しくするのです。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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1件のコメントがあります

  1. ネットが『動』を超加速させていますね。世界中の人々の刹那刹那の損得や情動を扇動し、異常な昂奮と恐慌を焚き付けているかのようだ。

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