誰が得する?その削減

出来るだけ無駄なコストはかけたくない。
その気持ちは私にもよく分かる。
費用を負担するのは会社であり、
中小企業ならば社長が負担しているのも同然だ。
会社の借金イコール個人の借金でもあるのだから、
無駄なお金など使いたくないに決まっている。

その大前提に基づいた上で、あえて言わせていただきたい。
全ての無駄を無くしてはならない、と。
何故ならそれは、自分自身の首を絞めることになるから。
残念ながら、無駄なくして
会社の経営は成り立たないのである。
例えば商品やサービスから全ての無駄を省いてしまうと、
他社との違いが無くなってしまう。

行き着く先は、価格競争というレッドオーシャンだ。
だがここに関しては、まだいい。
経営者にも自覚があるし、
少なくとも消費者の役には立っているのだから。
最も意味のない削減。
にも関わらず、ほとんどの経営者が自覚していないこと。
それは、メンテナンス費用の削減だ。

車や機械のメンテナンス費用ではなく、
人へのメンテナンス費用。
ここを削減することで誰が得をしているのか。
経営者はそれをきちんと自覚したほうがいい。
例えば社員に対して、最低限の報酬しか払わない会社。
見方によっては、無駄な人件費の削減とも言える。

だがその削減は、削減にはなっていない。
何故ならそんな会社には、優秀な人材が来ないから。
結果、優秀な人材なら一人でこなせる仕事を、
二人がかりでやっている。
とんでもない無駄だ。
更に、そのような会社からは、どんどん人が辞めていく。
抜けた人材の穴を埋め続けるための採用コスト。
これもまた無駄なコストである。

社員だけではない。
買ってくれた顧客に対するメンテナンスも同様だ。
例えば家や車のような購買頻度が低い商品の場合、
最低限のアフターフォローしかやらない会社が多い。
彼らは買った客よりも、
まだ買っていない客(つまり新規営業)に力を入れる。

釣った魚に餌は要らないというが、それは魚の話である。
相手は人間なのだ。
しかも今はSNS時代。
社員の満足や買った顧客の評価は、
採用力や集客力に直結する。
今いる社員にお金をかけない会社は、
莫大な採用コストを払い続けることになる。
買ってくれた顧客にお金をかけない会社は、
莫大な集客コストを払い続けることになる。

最低限の給料しか払わない会社では、
社員は最低限の仕事しかしない。
最低限のアフターフォローしかやらない会社からは、
最低限の買い物しかしない。
当然の帰結である。
結果、求人広告や集客広告にお金を払い続けることになる。
つまり得をするのは、広告会社だけなのだ。
社員も顧客も、どんどん離れて行く会社。
それは広告会社にとっての最もおいしい顧客。

結局は、どこにお金を使うのか、という話なのだ。
人のメンテナンスにお金を使えば、広告費は削減できる。
人へのメンテナンス費を削減すれば、広告費は増加する。
社員や顧客に好かれる会社と、
広告会社の営業マンに好かれる会社。
このどちらかを、選ばなくてはならない。
立ち止まって、冷静に考えてみて欲しい。
その削減によって、得をしているのは誰なのか。


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