【コラムvol.49】
理想という名の破壊。

現実対応の中で、確固とした『ビジョン』が芽生えるのだ。現実から遊離したビジョンではなく、根をはったビジョンが。

もしも、その現実対応が停滞へとつながってしまったのであれば。

手がほどこしようもないほどの厳しい現実であったか、あるいは、現実がせっかく示唆してくれた『変化の方向性』を、現実直視が浅すぎて見逃してしまったのかもしれない。

あるいは、対応したその現実は、自分に都合のいいように、見たいように改編された『ウソの現実』だったのかもしれない。

あるいは、対応が遅すぎて、すでに『過ぎてしまった現実』『変わってしまった現実』に向き合ってしまったのかもしれない。

現実の奥まで目が届かなかったか、『虚像』か『過去』を現実と見誤ってしまったか、いずれかの可能性が高い。

『本当の現実』を、幅をもってちゃんとつかまえられなかったということだろう。

たとえば、現実というやつには、「この事業モデルは現状のままでは、今後5年間かけてジリ貧になっていくことが、今はっきりわかった」という現実もある。

「このサービスモデルでは、時間経過とともにコモディティー化を極めてしまう。ただアクセクするだけの組織に陥ってしまう。でも、これをやれば、独自価値を発信できるかもしれない、と今ようやく気づいた」という現実もある。

つまり、これらへの現実対応には、「じゃあどうするか」という次の一手を考える強い動機が内包されているはず。これが、ビジョンの萌芽につながる。

もちろん、「現実なんてつまらないモノに根差すことなく、大志をもってして、私の理想いっぽんで、はなから遠大なミッションやビジョンを描きたいんだ」という経営者もいるだろう。

そして、その中から大成功を収める人もいるだろう。確率はわからないけど、たぶん千人、いや一万人に一人くらいは。

どんなサクセスロードを描くかは、その人の自由だし、器量と幸運があれば、うまくいくことだってある。しかし、確率だけでいえば、それはほとんどギャンブルだと言っても怒る人はいないだろう。

「成功確率の低いギャンブルであろうが、私はそれで突き進むのだ!」という人でないのであれば、『現実対応』の価値と深さを、改めてもっと強く再認識してもいいのではないかと思う。

現実対応とは、決して変化を求めないことでもないし、ビジョナリーの対局にあるものでもない。確実なビジョンと変化を引き出すものだ。

変化は誰でも求めている。現実は動いているのだから、変化しなければ置き去りにされ弱体化してしまう。

でも、大事なのは、そのスピードだ。急激な変化を求めるか。漸進的にじわしわ変化を求めるかだ。

現実対応にもとづくビジョンなら、取返しがつかないような失敗による打撃や損失は少ない。現実対応を確実に積み重ねていけば、堅実に賢く変化していくことができる。

ひるがえって、理想を追うことはどうか。理想はときに危険だ。理想にむけて急激にアクセルを踏み、急ハンドルを切れば、事故を起こし、とんだ痛手を負うことも多い。

ドライバーが扱い切れないスピードとカーブに挑めば、スピンする可能性は当然、高くなる。失敗をリカバリーできる体力がないのであれば、避けるのが賢明だ。

とはいえ、企業にはときに命運を賭けたチャレンジもある。しかし、社会や国はそうはいかない。企業とちがい、絶対に潰すわけにはいかないからだ。

現実にそってちょっとずつ変わっていく現実対応こそが、政治の要諦だろう。

政治が、威勢よく急激な変革をとなえだしたら、危ない。大衆ウケするから、ある種の政治家は言い出すが、それがいちばん危ない。

国や社会は、会社ではない。大胆な変革ビジョンは、未来志向っぽくて人々を魅了する。しかしそれは、破壊へとむかう大衆誘導なのではないだろうか。


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中小企業に、発展のきっかけを投げかけたい。だから、ハッテンボールです
【ハッテンボール・グループ 代表取締役 伊藤英紀】
企業表現コンサル/コピーライター 1961年生
広告学校と大学をダブルスクール。㈱リクルートで、バイトなのに制作チーフを務めたのち、同社契約コピーライターに。1990年 前身 伊藤英紀事務所を創業。※元ワイキューブ取締役
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