この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
副業って今、問題になってるんですか?
労務管理という観点で「副業ってやっぱできないよね」となってます。
それはどういう理由で?
いちばん難しいのは労働時間ですね。
労働時間?
たとえば、とうかいで働いた後にコンビニで働いてますと。かなり疲れますよね。
めちゃくちゃ疲れそうです。
本人にとっては残業してるみたいなものですよね。
そうですね。
でも残業代のような1.25倍の時給は払えないよと。
そりゃあ払えませんよね。コンビニとしては。
とうかいとコンビニと「残業はそれぞれで管理しましょう」ってことになるじゃないですか。
そりゃあ、そうなるでしょうね。
でも「いやいや、それじゃあ健康を害するじゃないですか」ってことです。
なるほど。
政府としては「A社とB社の足し算」みたいな残業の定義はやめたいんですけど。
それに反対する人がいるんですか?
います。反対派はとにかく「従業員の健康が大事」だと。
誰が反対してるんですか。政治家ですか?
基本的には政治家ですね。この手の話になると必ず出てくる人たち。
なるほど。副業反対の票を狙ってる政治家ですね。
そうです。
その人たちは、どういう主張なんですか?
「もっと本業の報酬を増やせ」という主張ですね。
「本業と副業で半分ずつ稼いでる」とか「3社で3分の1ずつ稼いでる」みたいな人は、どうしたらいいんですか?
今後はそういうケースが増えていきますよね。
はい。そうなったら「もっと本業の報酬を増やせ」という主張は通らないですよ。
どれが本業か分かりませんからね。
もはや正社員って扱い自体が難しくなるじゃないですか。
結局、副業がどんどん進んでいくと、雇用という概念がなくなると思うんですよ。
ですよね。
でも彼らには「仕事終わった後に時間を切り売りする」という副業の発想しかないんです。
困ったもんですね。
副業って本来、もっと業務委託的なイメージだと思うんですよね。
そうならないと意味がないですよ。時間を売る仕事だと24時間が限界だし、そんなに働いたら絶対に健康を害するし。
発想が古いんですよ。それこそ昼休みに考えたアイデアを売るとかでも、ぜんぜんいいわけじゃないですか。?
まさに、それこそが副業ですよ。
昼休みといえば、トレーニングがてらUber Eatsをやる人が増えてるそうです。
昼休みに?
休憩時間に。ジムに行く感覚で自転車に乗って、牛丼とかハンバーガーとかのデリバリーをするんです。
トレーニングと一石二鳥だと。
はい。
そういえばポスティングっていう仕事があるんですけど。
チラシをポストに放り込む仕事ですよね。
はい。年金もらってるおじいちゃんが散歩のついでにやるんですって。ちょっとしたお小遣い稼ぎ。散歩も兼ねて。
いいですね。スマホ持ち歩いとけば「今日はこれだけ歩きました」みたいな。
これだけお小遣いも稼げました。みたいな。一石二鳥。
ちょっと発想を変えれば副業も変わるような気がするんですけど。
いくらでも変えられますよ。働くことは悲惨だという前提がありすぎるんですよ。
会社にとっても都合の悪いことがあるんですよ。副業って。
辞めちゃうとかですか?
そう。副業で稼いだら社員が辞めていくと思ってる。辞めない自信のある会社は「イノベーションにつながるかも」って賛成しますね。
辞めたら辞めたでいいじゃないですか。
「重要な技術や顧客情報が流出する」みたいな危惧もあって、難航してますね。
なるほど。会社側もそんなに乗り気じゃないと。
大手の優秀な人でも「何を副業にしていいか分からない」って人がほとんどですし。
やりたいことを、やればいいのにと思うんですけど。副業って「お金が足りない」っていうのが前提なんですかね。
大多数のイメージはそうじゃないですか。
じゃあ働く側としても、本音では副業を禁止して欲しいんですかね。
その分の給料が増えるなら、そっちのほうがいいんじゃないですか。
でもそんなの絶対無理じゃないですか。会社が保たない。いまでもギリギリなのに。
今、残業の上限規制がすごいじゃないですか。
はい。
残業が減って、早く帰らされて、逆にお金が足りなくなった人が増えてるらしいです。
時間があるとお金使っちゃいますもんね。
で、結局お金が足りないから、時給仕事で副業してしまう。
それで健康に何かあったら、本業の会社が責任取らされるってことですよね。
あまりにバランスが悪すぎなんですよ。
労働者により過ぎってことですか?
はい。今のままだと会社が副業を認める価値がない。副業されて情報が出てくかもしれないし、副業で疲れて出社してきてもクビにできないし。
たとえば大手企業だったら、今リストラがすごいじゃないですか。
はい。
副業を機に、社員をリリースしたいっていう狙いもあるんじゃないですか。
それが出来るなら、どんどん副業させるでしょうね。
今後はどうなるんですか。タニタみたいに雇用契約を業務委託契約に変えていくとか。
本人が望めばそういうケースも出てくるでしょうね。
社員と合意していても、タニタさんなんかは叩かれてますけど。
何とかして阻止したい人が一定数いるんですよ。
どうして、そこまで反対するんでしょう?
業務委託契約って、辞めるのとほぼ一緒ですからね。法的には。
本気で好きなことを副業にしたいんだったら、本業の収入を減らすぐらいの覚悟は必要だと思いますけど。
そこまで覚悟してる人が、まだいないってことですね。
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。