第81回「他社との差別化」という違和感

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

商売において、「他社との差別化が大事である」といった言葉を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。

「他社と同じことをやっていては売れない」
「他社との違いを作るからこそ売れる」

確かにこれは一見、筋が通っている正しい考え方のように思えます。
だからこそ多くの人にこの言葉が浸透しているのでしょう。

でも、これって本当なんでしょうか?
私はどうもこの「他社との差別化」という言葉に違和感を覚えてしまうのです。


「他社との差別化」
私がこの言葉に違和感を覚える理由。

それは、私のお気に入りのお店などを見ていると、他のお店と差別化しようなんて思っているようには全く見えないからです。

私のお気に入りのお店。
そのお店は内装やメニューなど、どれを取っても他のお店と差別化されたところは見られません。

「他社との差別化が大事」というのが本当ならば、このお店は繁盛しないことになります。
でも実際は繁盛している訳です。

じゃあ私は、なぜこのお店にリピートしているのか?
それは、オーナー自身が「他とは違う」ことをしようとしているのではなく、「自分の好き」を追求している姿勢に私が共感しているからだと思います。

少し語弊がありますが、このお店のオーナーは味に対するこだわり以外にはほとんど興味がないようにも見えます。でも、だからこそオーナー自ら調理し、提供してくれる料理にこだわりが感じられるのであり、そのこだわる姿勢を応援したくなるお客さんが多いから、お店は繁盛しているのだと思うのです。

「他社との差別化」
この言葉を聞くと、私たちの頭にはどうしても競合の存在が浮かびます。

ただ、自分のお店がお客さんにとって特別な存在になろうと思うのであれば、やるべきなのは他社との違いを作ろうとすることではなく、自分の好きを掘り下げ続けることであり、他社との差別化という言葉に囚われ意図的に作った違いに、お客さんが共感することはないのではないでしょうか。

他社との違いを作ろうとするのではなく、他社など気にせず自分の好きを追求した結果、他にはないこだわりを持つお店になる。これこそが正しい順序であり、他社の動向ばかりに注目しているお店がお客さんの注目を集められることなんてないと思うのです。

 

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから