第128回 アベノマスクは良策だった?

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第128回「アベノマスクは良策だった?」


安田

久野さんに五輪問題を聞いていいものかどうか。

久野

この対談が配信される頃には五輪が始まってるかもしれないですね。

安田

国民の大半が中止にしてほしいと言ってるイベントがなかなか中止にならない。アメリカが日本を渡航禁止国にすると、大喜びしてたりして。

久野

外圧だのみですよね。

安田

日本人ってものすごく自虐的ですよね。常に外部の圧力を求めてるところがあるというか。

久野

そうですね。

安田

そういう国民性なんですかね。

久野

日本は常に「変化するよりは、変化させられる」というキーワードだと思う。

安田

ですよね。

久野

ちょっと前までは「リモートワークなんてふざけるな」とか言ってたのに。コロナの外圧で世の中だいぶ変わりましたもん。

安田

久野さんの予想では、五輪はやるんでしょうか。

久野

やると思います。

安田

もう止めようがない時期まで来てますけど。やっていいんですかね。緊急事態宣言だってこの先どうなるか分かりませんし。

久野

もうここまで来たらやるでしょう。

安田

そういえば去年、一律でひとり10万円支給されたじゃないですか。

久野

はい。

安田

今回は「お金が借りられない世帯に最高で30万円支給する」みたいに言ってて。

久野

そうですね。どうにもならない世帯にだけ配る感じですね。

安田

なぜ今回は一律で配らないんでしょう?

久野

コロナが始まったときはショック状態で、全員が大変になると分かってたので全体に配ろうという話になった。

安田

はい。

久野

今はコロナっていうものが分かり始めて、とにかく全員にいい顔するんですよ。日本の政治家は。

安田

だったら全員に配ったほうがいいのに。

久野

逆に全員に配ると「何も影響受けてない人もいるよね」「むしろ儲かってる人もいるじゃん」っていう、その世論が怖いんですよ。

安田

だから一部にだけ配ると。

久野

本当に弱ってるところをサポートする。

安田

飲食店のサポートも同じような理屈で1日6万円配りましたけど。小さい店は助かるけど、大きい店はつぶれろと言ってるに等しいような状況になってます。

久野

だけど大きいところをサポートすると、今度はそれで文句を言う人が出てくるんです。

安田

なるほど。一律支給しても、しなくても、文句を言う人は出てくると。

久野

そうなんです。

安田

アベノマスクも一律に配って大失敗しましたもんね。

久野

アベノマスク自体が必要だったかどうかは別問題として。あれを全国民に配った価値はあリましたよ。

安田

ありましたか?

久野

世の中のマスク価格を下げたという効果はあった。

安田

あれで下がったんですかね、本当に。

久野

多分あれで下がったと思います。だけどああいう思い切った政策をすると、めちゃくちゃ叩くんですよ。

安田

仮にアベノマスクを本当に困ってる人だけに配っていたとしても、結局みんな文句を言ったってことですか。

久野

絶対言ってたと思います。

安田

なるほど。

久野

配らなくても文句言ってるでしょうし。

安田

じゃあ政策が悪いんじゃなく、国民性の問題だってことですね。

久野

そうですね。変なときに平等って言い出すし。

安田

政府としてはやるべきことはやってると。

久野

もうすでにかなりのお金を出してますから。

安田

税理士さんと話してると、クライアントがお金がじゃぶじゃぶ過ぎて「何に使っていいか困ってます」というのが多いそうです。

久野

ここぞとばかりに借りまくってる会社もありますから。

安田

そうですよね。

久野

基本的に政府の役割って、生活困窮者に対してお金払うことなんですよ。これは社会保障の大原則だと思います。

安田

でも実際にはダブついちゃってますよね。

久野

本当はつぶれそうなところを保障してくべきなんです。だけど目的がよく分からないまま「取りあえず危ないから、みんなにコロナ融資しておこう」となってる。

安田

借りる方も不安じゃないんでしょうか。

久野

日本人の国民性ってすごく不思議で。日本という国はすごく信頼してるんですけど、日本の政治に対していまいち信用してないっていう。

安田

日本人は国を信頼してるんですか?

久野

日本は破綻しないと信じてますね。海外だとあんまり自国のこと信じてないので、自分の国の国債なんて、そう買わないんですよ。

安田

へえ〜。

久野

日本人は、日本のこと信じてるのでどんどん買います。

安田

確かに。ドル建てで貯金してる人なんて、すっごく少ないですもんね。

久野

そうです。

安田

それって国を信じてるってことですか?

久野

信じてるんだと思いますよ。

安田

だけどみんな「日本の未来に期待してない」とか「夢を抱けない」とか、平気で言うじゃないですか。

久野

言うんですけど、日本は信じてます。

安田

何を根拠に信じてるんですか?

久野

もうみんな「こうなってほしい」みたいな希望的観測で生きてますよ。

安田

信じているというより信じたいんだと。

久野

そこがなくなったら本当にマズイです。日本人って政府の役割をよく理解してないので。

安田

理解してないですか。

久野

政治家もあまり政策意図とか伝えてないので。マスコミやSNSが勝手に政策意図を決めちゃうところがあって、それが非常にまずいと思う。

安田

なるほど。アベノマスクも実は良策だったと。

久野

そこに戻しますか(笑)

安田

だってあれ小さすぎでしょ。安倍さんもほとんど顔がはみ出てたじゃないですか。

久野

確かにそこは否めないんですけど(笑)でもあれはマスクの価格を下げるためにやったことですから。私は良策だったと思ってます。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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