スタッフに強く言えないお医者さん〜お医者さんは、なやんでる。 第116回〜

第116回 「スタッフに強く言えないお医者さん」

お医者さん
お医者さん
あ…いや、忙しいならいいんだ。僕が後からやっておくから。うん、もう上がってもらって大丈夫。
お医者さん
お医者さん
……本当に帰ってしまった。ああ、どうしてガツンと言えないんだろう。仕事が終わってないのはあのスタッフのせいなのに。
どうしました、先生。随分落ち込んでらっしゃいますけど。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、あなたは確か……
ご無沙汰しています。ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうでした。いや、恥ずかしい所を見られてしまったな。お察しの通り、僕は気が弱くてスタッフさんになかなか強く出れないんです。
なるほど……でも、本来はさっき帰られた方のお仕事だったんでしょう?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうなんですけど。でも、ウチも人数ギリギリで回しているので、辞められたりすると困っちゃうんです。給料を支払いながら、気も使ってる……我ながらおかしな事をしてるなって思うんですけど。
確かにそうですよね。とはいえ、先生のようなお悩みを持つお医者さんは増えていますよ。採用難だと知っているからこそ、スタッフに気を使わざるを得ないという。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、やっぱりそうなんですね。加えて最近は物価高騰もすごいでしょう? スタッフからはむしろ「もっと給与を上げてくれ」ってチクチク言われる始末で。
一方で医療費はどんどん減少してますからね。病院経営者としては正直「やってられない」という感じでしょうね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ははは……本当にそうですよ。とはいえ、スタッフがいなくなれば仕事は回りませんから。へそを曲げられて、パート同士で結託して同時退職……なんてことになったら目も当てられません。結局、こちらが折れるしかないんですよ。
いや、そんなことはないと思いますよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
え? どういうことです?
人間が頼りにならないなら、システムで対応するもの手ですよ、ということです。システムを入れることで代替できる部分は思い切って任せてしまい、信用できる少数のスタッフで現場を回すんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
システム……例えばどういう?
わかりやすいものでいえば、予約、受付、会計あたりですね。考えてみてください。先生自身も、コンビニやスーパー、飲食店などではそのあたりをスマホで済ますことも多くありませんか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
あっ、確かに。スーパーはセルフレジだし、飲食店予約もアプリでやることがありますね。
ですよね。医療現場ではまだ珍しいと言うだけで、技術的にはもう当たり前のものなんです。いずれにせよ、そういった部分をシステムで対応できるようになれば、スタッフの人数は少なくて済みます。結果、経費削減にもなりますし。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うーむ、なるほど。確かにそういう対応も必要なんでしょうね。……ただ、正直言って、いますぐそちらに舵を切る自信はないなあ。
そうですね。システムを導入するにしても、一気にスパッと変えるというより、状況に応じて少しずつ移行していく形になるでしょう。ちなみに、もしあくまで雇用にこだわるのであれば、いい人材を集めるとっておきの作戦があります。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
え? だって今は採用難だって仰ってたじゃないですか。実際そうだし。
それはそうなのですが、なぜ採用難かというと、いい人材を病院やクリニックが取り合っているからです。いい人材が存在しないわけじゃない。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふうむ。で、そのとっておきの作戦というのは?
ズバリ、自由診療に業態転換し、給与アップをすることです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
あ! そうか、そう言えば以前も自由診療をオススメしてくれましたもんね。なるほど、自由診療で回せるようになれば、今よりは多少高いお給料を出せるかもしれない。
はい!そうなれば自然といい人材が集まるようになりますし、いい条件の職場は辞めたくないですからね。スタッフさんも先生に気に入られようと一生懸命働いてくれるはずです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほど〜!全部つながっているんですね。ちょっと真剣に考えてみます!

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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