見ましたか?緩い職場のニュース。
あれすごいですよね。
職場が緩くなったことで若手が離職してるそうで。
はい。どうしたらいいか、もう分からないです(笑)
今までは逆でしたけど。厳しすぎる会社がブラックと言われて、人が来なくなって、みんなホワイト企業を目指すようになって。
そうなんですよ。社員に優しくて、無理に残業させず、お酒にも付き合わなくていい。
そしたら若手が「こんな緩いところでは成長できない」と不安になって辞めていく。
どうしたらいいんですかね。
厳しくするしかないですよ。上司や先輩の指導が「厳しいと感じない」「ほとんど感じない」という人が6割もいるそうですから。
とは言え、ハラスメントの研修もやってますから。嫌なことはもちろん言えないし、詰める行為もできないし。
詰めなくていいんだったら、上司も楽ですよね。
それが嫌で辞める人もいます。
詰めるのも嫌な仕事ですからね。ストレスもあるでしょうし。
でも売り上げ目標って、未達の人がちょっと嫌な気持ちにならないと。さすがに会社としては成立してないというか。
そうですよね。社長はたまったものじゃないでしょう。
稼いでない人にも何も言えないし、何も問題にならないっていう。
業績が下がるのも当然かも知れませんね。
そういう状態をつくることに、ここ数年の日本社会はめちゃくちゃパワーをかけてきたんだと思います。
なぜそんなことをしたんでしょう。
いわゆる働き方改革ですね。どんな人でも仕組みで業績が上げられるようにしていこうと。
そういう仕組みを考えるのが経営者の仕事ですか。
ある一定の給与までは、誰がやっても払えるような仕組みが必要ですね。
真面目に8時間働いてくれたら、誰がやっても成果が出る仕組みにすると。
それが働き方改革の大きな目的です。
それを実現すると、社員は「自分の成長」が不安になって辞めていく。
たぶん意欲が高い人ほど辞めるでしょうね。
やってもやらなくても同じだったら、そうなりますよ。
そんなに前向きじゃない人にとっては、いい流れなんでしょうけど。
たとえば公務員は1級とか2級とか分かれてるじゃないですか。出世コースに行く人は最初から違う。ああいうふうに分けちゃったらどうなんですか。
1級社員、2級社員、3級社員みたいに分けるってことですか。
はい。3級は誰も怒らないし怒られない。言われた通りのことやってればそれでいい。入社試験で分けてしまうのは法的に駄目なんですか。
ちゃんと入口が分かれてればいいんじゃないですかね。世界のスタンダードはそうですから。
ですよね。入口からして違いますもんね。
はい。「成果上がらなかったら辞めてくれ」という社員もいれば、「やることだけやってくれればいいよ」という社員もいる。ジョブ型ってそういうことなので。
久野さんの会社で1級、2級を分けてみてくださいよ。
全員が2級を希望したら心が折れそう(笑)
今はそっちの方がマジョリティかも知れませんね。
1級を希望する人のほうがレアでしょうね。
国民の多くが2級、3級を希望してたら、そりゃあ2級国、3級国になりますよ。
経営者も怖くて「お前やる気あるか」って聞けないですよ。
さすがに「あります」とは言うでしょう(笑)
言うんだけど「本心は3級です」みたいな。
給料が増えても「管理職になりたくない」って人の方が多いらしいです。
あれ言われると社長は心が折れちゃいます。
「稼がなくていい。出世しなくていい」って言われたら、マネジメントしようがないですよね。久野さんはどうしてるんですか。
ちょっと嫌な気分にさせてると思います。
ちょっとぐらい嫌な気分になってもらわないと、経営者はやってられないですよね。
適切な不快感は必要だと思います。それがないと全体が駄目になっていくので。
誰かが詰めるってことですか。
言葉で詰めなくてもいいように、不足感を認識させる仕組みが必要です。
緩いだけではやっぱり成り立ちませんか。
給料をかなり下げないと無理だと思います。
若い人はそこに気がついてるんでしょうか。
会社がいずれ立ち行かなくなると思ってるんでしょう。若い人の方が健全ですよ。国にも会社にも期待できないし、自分を守ってくれるのはスキルだと思ってる。
やっぱりスキルしかないですよね。ということは厳しい会社の人気が逆に出てくる?ちょっとブラックな会社とか。
それはないと思います。ある程度厳しくて、ちゃんと教育してくれるホワイト企業に人が集まる。
「厳しいけど、そんなには厳しくない」みたいな。
定義が難しいですけど。ブラックではない感じですね。
ブラック企業出身の有名な経営者って、結構いますけど。
若いときに「重い責任」を無理やり課されて、長時間働かされることで、得られる経験値ってあるんですよ。
ありますね。確かに。
それが「そこそこいい会社」で体験できるのが一番いいんですけど。一番まずいのはその両方がないところ。
ホワイトでもブラックでもない、グレーな会社ってことですか。
ルーティン業務を、ひたすら責任のない状態で、3年も4年もやらされる。そういう会社がいちばんまずいと思います。
なるほど。
でも結局は自分次第でしょうけど。教育なんて限界がありますから。
自分で成長しようと思わないと、どうしようもないですもんね。
そうなんです。過保護過ぎても独り立ちできないし。
日本は国を挙げて過保護ですけど。
国を挙げて過保護になって、みんながちょっとずつ貧乏になってる感じ。
このままで大丈夫なんでしょうか。
無理ですよ。人生100年もある時代ですから。
どこかで限界が来ますか。
間違いなく来るでしょう。限界突破するためにはどこかで頑張るしかないです。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。