第179回 情報の投資と回収

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

2023年に入ってからの1月から2月にかけて、飲食店は一般的に閑散期でした。
そんな時期という事もあり、最近は開業オーナーさんと一緒に繁忙期へ向けた集客準備をしている時間が多かった訳ですが、そんな仕事をしている時に、ふとした気づきがありました。

それが「情報もお金と同じように、投資と回収のサイクルがあるんじゃないか」という事。


私は開業オーナーさんに対して、自身の経験に基づく集客の考え方や、集客に使う具体的なツールの制作方法を教えています。

そこでは当然、私の経験から得てきた情報を出していく訳ですが、最近オーナーさんへ私から情報を出すほど、自分の中にも新しい発見が増えてきているという事に気づいたのです。

もう少し具体的に書くならば、よりオーナーさんにとって分かりやすい情報を提供しようと考えている過程で自分の中に新しいヒントが生まれ、そのヒントが結果的に自分の仕事の質も上げてくれたという事です。

これはつまり、情報を先に出した事によって、後から自分の中に新しい発見が入ってきたといえる訳であり、お金に例えるならば正に「投資をしたから回収がある」のと同じ流れだと思うのです。

私たちはつい、自分ばかりが情報を集め、その情報を自分の中だけに留める事で、商売を優位にできると考えてしまいがちな気がします。確かに今ほど情報の発信が容易ではなかった頃であれば、それでも良かったのかも知れません。

ただ、今ほど情報の発信が容易になっている時代においては、自らの情報は出さずに他人からの情報ばかりを欲しがろうとする事は、商売におけるお金と同様に、投資をせずに回収ばかりをしようとしている思考に近く、そうした思考の元には却って情報は集まらなくなり、結果的に商売が好循環に入っていく事を難しくしてしまうのではないでしょうか。

何かを得たいと思うのであれば、まず先に自分から情報を出していくということ。

お金も情報も、「投資をすれば必ず回収ができる」というものではないと思いますが、「投資をしない限り回収もない」と考えるのであれば、どんどん先に情報を出していくという投資の姿勢こそが、商売の現状に変化を起こすという回収へ近づく確かな一手ではないか、と私は思うのです。

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから