第30回 社会に育てられた15歳

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第30回 社会に育てられた15歳

安田

今でこそ順風満帆な生活を送られている中辻さんですが、これまでの人生を振り返って「ここはやり直したいな」と思うことってありますか。


中辻

えー、どうかなぁ。基本的には思わないですけど。あ、1つありました。以前働いていた印刷会社を辞めたこと。それは少し後悔しましたね。

安田

その会社、以前の対談でお聞きしましたね。たしか入社1年ほどで正社員、5年後には工場長、という大出世をされて。


中辻

ええ。Illustratorというグラフィックソフトを使った仕事をしていたんですが、それがすごく好きで。あのまま働き続けて、自分がどこまでできるか試してみたかったな、という気持ちはあります。

安田

なるほど。そもそもなぜお辞めになったんでしたっけ。


中辻

リーマンショックなどの影響で会社の経営が危なくなってしまって、これはちょっと娘を養っていけないかもしれないと。嫌になって辞めるわけではないから、当時も残念な気持ちでしたけど。

安田

そうだったんですね。でも結果的に、その会社を辞めたからこそペイント王に出会い、そしてマメノキカンパニーの取締役にもなっていくわけで。そう考えるとその退職も、人生の階段を上るために必要なことだったように思います。


中辻

そうですかねぇ(笑)。

安田

中辻さんはこの先も経営者として着実に成長して、さらなる高みに上っていきますよ。私は勝手に確信しています(笑)。


中辻

ふふふ、ありがとうございます(笑)。

安田

ちなみに社会人になる前はどうでしょう? 10代で子どもを出産して育てていくってかなり大変なことですよね。当時を振り返って、ここはやり直したかった、こんな人に出会いたかった、と思うこともあるんでしょうか。


中辻

いえ、特に思わないですね。そういう判断をしたから娘にも出会えているわけですし。そもそも私、家庭環境こそ最悪でしたけど、周りに助けてくれる大人は大勢いたんですよ。

安田

へ〜そうなんですね。


中辻

ろくに通っていなかったのに、中学の先生もすごく親身になってくれて…時には厳しく叱ってもくれました。今でも恩を感じています。

安田

中学生にとって、親や学校の影響って大きいですからね。中辻さんはいい先生に巡り会えていたようで良かったです。


中辻

ええ、ありがたいことです。それに、妊娠後に受けた仕事の面接でも、素敵な方々に巡り会っているんですよね、私。

安田

え、妊娠中に働こうとしたんですか。


中辻

はい(笑)。当時私は15歳で、赤ちゃんの父親は20歳くらい。2人とも全然お金がなかったから、赤ちゃんを育てるためにすぐにでも働かなきゃと思って。

安田

すごいですね。でも15歳だと雇ってくれるところも少ないんじゃないですか?


中辻

仰る通りです。でも当時はそういうこともよくわからないので、自分がやりたい仕事に体当たりで面接に行っていました。

安田

へぇ。たとえばどんなところに応募されたんですか。


中辻

よく覚えているのが、ホテルと美容室ですね。

安田

ホテルですか。それはまたどうして?


中辻

ホテルマンとして働いている女性が、凛としててカッコ良く見えたんですよね。そういう大人に憧れがあったというか。で、目の周りをアイラインで真っ黒に囲んだパンダみたいな化粧をして、金髪のまま、ホテルに面接にいきました(笑)。

安田

笑。面接官の反応が気になります(笑)。


中辻

それが、女性の面接官だったんですけど、すごく真剣に私の話を聞いてくれて。それだけじゃなく、すごく熱心に話し方を指導してくれたんですよね。こういう場では「ママ」じゃなくて「私の母」って言うものなんだよ、とか。

安田

へぇ。面接の場でそこまでしてくれたんですか。きっと中辻さんの「働きたい」という想いが伝わったんでしょうね。


中辻

そうかもしれません。しかも面接の最後には、ホテルマンとして採用された人が研修で使う教育本のようなものもいただいて。面接後、一週間くらいかけて読んだ覚えがあります。

安田

へぇ、それはすごい。


中辻

その本のおかげで、自分が社会に全然適応できてないんだな、ということがわかりました。あの面接官さんも、「この子が人生を渡っていくには、ちゃんとした社会性を学ばないといけない」と思ってくれたんでしょうね。

安田

そこに気づける中辻さんもすごいと思いますけどね。ちなみに美容室の面接はどうだったんでしょう。


中辻

面接に行ったのに、めっちゃキレイに髪の毛を切ってもらえました。しかも無料で(笑)。

安田

えっ、どういうことですか(笑)。


中辻
当時は美容師の仕事にも憧れていたので、「弟子入りさせてほしい」って熱く語ったんです。そしたら「本当に美容師になりたいなら、ちゃんと出産して大人になってからまたおいで」と言われて。
安田
なるほど、その時点で誠実な対応だとは思いますが、そこからなぜ髪を切ってもらうことになるんですか(笑)。

中辻

せっかく面接に来てくれたんだから、アナタが憧れている美容師の本気を見せたるわ! って(笑)。

安田
すごいいい人じゃないですか(笑)。お話を聞いていると、確かに中辻さんって、ものすごくいい人に恵まれていますね。

中辻

そうなんですよ! 実の父親以外、いい人ばかりに出会えています(笑)。

安田
家庭環境のせいで家を出ることにはなったけれど、その後は社会のいろんな大人が中辻さんのことを受け入れ、育ててくれたんでしょうね。

中辻

ええ、本当に周りの方々には感謝しています。学歴や常識が全然なくても「自分の想いはきちんと伝える」という気持ちがあれば、助けてくれる人はいるんですよね。

安田
ああ、確かに中辻さんってそういうイメージです。本音で話すからこそ、相手も協力したくなるというか。

中辻

もちろん心優しい大人がたまたまたくさんいた、ということもあると思います。そこについてはものすごく運が良かったなと。

安田
素晴らしい。きっと前世ですごく良いことをしたんでしょうね(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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