第37回 チラシを拾いに溜池に飛び込んだ話。

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第37回 チラシを拾いに溜池に飛び込んだ話。

安田

以前、「チラシを拾うために池に飛び込んだ」ってお話をサラッとされていたと思うんですが。私、その真相がずっと気になっていたんです。詳しくお聞きしても大丈夫ですか?(笑)


中辻

もちろん大丈夫ですよ。ウチではそういうトラブルも含めて、全部オープンにやっていますので(笑)。

安田

ありがとうございます(笑)。池にチラシが落ちていたというのは、要は、捨てられていたってことですよね? どういう経緯でそんなことに……


中辻

某大手電気屋さんのチラシだったんですが、東京の広告代理店さんからウチにポスティング依頼がきていたものだったんですね。

安田

なるほど。チラシの配布を中辻さんの会社が請け負っていたわけですね。


中辻

そうです。配布数日前に代理店さんからチラシを受け取り、大阪の羽曳野市エリアに配布する予定でした。ところがそれが、溜池にプカプカと浮いていたんですよねぇ(笑)。

安田

うわあ、それは嫌だなぁ(笑)。ちなみに、どうやってそれを知ったんですか?


中辻

まず溜池の持ち主さんが、チラシの不法投棄に気づいて警察に連絡されたんです。で、警察がそのチラシを確認して広告主の電気屋さんに連絡。電気屋さんは東京の広告代理店さんに連絡をし、そして私のところまで連絡が回ってきた、というわけです。

安田

実際に溜池に行かれて、チラシが浮かんでいるのを見られたときって、どういう気持ちでしたか。


中辻

向かっている途中は「なんでこんなことになってるの?」という気持ちでしたけど、現場で実際に何枚もチラシが浮かんでいるのを見た時は、「とにかくまず拾わなきゃ!!」と思いましたね。理由はどうあれ、溜池の持ち主さんはもちろん、電気屋さんにも代理店さんにも大きな迷惑をかけているわけですから。

安田

それで自ら溜池に入っていったんですか? そんなのダメですよ、危険すぎます(笑)。


中辻

笑。でも、手を伸ばして取れる距離でもなかったので、とにかくまずは溜池の持ち主さんを探そうと。それで、近隣のお家を1軒1軒まわってようやく探し当てました。

安田

すごいなぁ(笑)。持ち主さんに会えて、次はどうしたんでしょう。


中辻

謝罪して、とにかく拾いたいんですってことを伝えました。すると持ち主のおじちゃんが、「入るのは危ないから、これを貸したる!」と、3mくらい長い棒の先にフックのようなものがついた道具を貸してくださって。

安田

へえ〜、そういう道具があるんですね。


中辻

おじちゃんの自作なんですって。というのも、そこの溜池は自転車や家電なんかがよく不法投棄されていたらしくて、それを拾うためにおじちゃんが自分で作ったって(笑)。

安田

すごいなぁ(笑)。じゃあそれを使って、無事に回収できたわけですか。


中辻

いやいや、全然でした(笑)。紙だから水流でヒラヒラ動いていっちゃうし、棒が溜池の底にあたるとヘドロが巻き上がって水が濁っちゃうし。

安田

それは大変そうですね。おじちゃん自作の棒で、何枚くらい回収できたんですか?


中辻

なんとか10枚程度。ただその時点で、東京の代理店さんが大阪まで来るっていう話になっていたんですよ。そのときに「全部は回収できませんでした」では済まないな、と思いまして。

安田

いやいや、もう十分だと思いますけど!


中辻

そうはいかないんですよね。パッと見にはもうチラシが見えなくなっていても、何かの拍子に浮かび上がってくるかもしれませんし。

安田

ああ、確かにチラシには電気屋さんの名前が入っていますもんね。後日また別のトラブルに発展してしまうかもしれないわけですね。


中辻

仰る通りです。だから本当、チラシの不法投棄っていろんなところに迷惑がかかるんですよ。

安田

そうですよね。それで、おじちゃん自作の棒ではもう限界だとなり、そこでついに溜池に入るわけですか。


中辻

はい。先日、SNSにも写真をアップしましたけど、釣り用のツナギを着て溜池の中に入りました。「どうしても入るっていうなら、おっちゃんの鮎釣り用のツナギを貸したるわ!」って持ってきてくれたので(笑)。

安田

笑。若い女性があんなツナギを着て、溜池でチラシを拾うなんて。そんな光景、なかなか見られないですよ。衝撃的すぎます(笑)。


中辻

笑。で、ソロソロと溜池に入ってチラシが沈んでいる場所までゆっくり近づいている時に、ちょうど代理店さんが東京から現場に到着して。半泣きされました(笑)。「そこまでしなくていいですよーーー」みたいな。

安田

それはそうでしょう。私もきっと同じ反応すると思います(笑)。それで結局チラシは全部拾えたんですか。


中辻

はい。確か38枚だったと思いますが、1枚残らず拾い切りました!

安田

おぉ、すごい! というかそもそもなんで溜池に捨てられていたんですか。スタッフさんがポスティングするのが面倒になって、捨ててしまったんでしょうかね。


中辻
そうだと思っています。実際は、そのスタッフさんにどれだけ問い詰めても、最後まで「捨てた」とは言いませんでしたけど。ウチはGPSを入れているので、その溜池に近づいたことも、その溜池の前に5分くらい留まっていたことも、全部記録に残っているのに。
安田
そこまで詳細にバレているのに認めないなんて、往生際が悪い(笑)。さすがにそのスタッフさんは解雇ですか?

中辻

実は、状況を聞き取りしている途中から全然連絡が取れなくなっちゃったんですよ!

安田
ああ、きっと罪悪感があったんでしょうね。

中辻

どうなんでしょう(笑)。でもまあ、万が一チラシが捨てられてしまったら、それをきっちり全て回収するところまでが私たちの仕事だということを痛感した出来事になりましたね。今でもあの経験は私の糧になっています。

安田
なるほどなぁ。中辻さんの武勇伝を、また1つ知ることができました(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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