第282回 確定拠出年金の賢い受け取り方

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第282回「確定拠出年金の賢い受け取り方」


安田

iDeCoって確定拠出年金ですか?

久野

iDeCoは個人型の確定拠出年金ですね。会社員は2万3000円、国民年金の人は6万8000円まで拠出できます。簡単に言えば積み立てができる。

安田

つまり自分のお金を自分で運用するってことですか? 

久野

そうです。運用益に対して一定の税制優遇が受けられる仕組みです。

安田

なるほど。利益が出ても課税しないから老後のために自分で貯蓄して運用してねと。

久野

そういうイメージです。

安田

そのiDeCoの掛け金の上限が上がると聞きました。

久野

このままだと老後生活が厳しいと言われていて、上げていかざるを得ない感じです。

安田

そうなったら企業型の確定拠出年金の上限も上がるんでしょうか?

久野

制度としては連動してるので、企業型確定拠出年金も上がるだろうと言われています。

安田

よかったです。ちなみに年齢の上限も上がるんでしょうか? 私は55歳で加入したんですが65歳で終了になる予定で。

久野

安田さんは今でも最大で70歳までOKです。

安田

え?そうなんですか。

久野

はい。就業規則に「70歳までの継続雇用」を謳わないといけないですけど。そうすると70歳まで設定することができます。

安田

私の会社には妻と私しかいませんが。それでも就業規則が必要なんですか。

久野

必要です。将来従業員が入ってくる時のための福利厚生制度として導入しているので。

安田

なるほど。ちなみに就業規則はとうかいさんで作っていただけるんですか? 

久野

はい。やっておきましょうか。

安田

ぜひぜひお願いします。70歳まで延長したいです。でもこれで70歳までは解約できないってことになるわけですね。

久野

そうでもないです。60歳以降で、例えば会社を辞められたりすると、受け取ることはできます。

安田

会社をやりながらは無理だと。

久野

それは無理ですね。

安田

途中で私が死んじゃった場合どうなるんですか?

久野

途中でお亡くなりになった場合は相続財産としてご遺族に行きます。

安田

その時点でもう掛け金はストップになるんですか?

久野

掛け金はストップになって、その時の総額がご遺族に行きます。

安田

受け取った遺族はそのまま運用することもできるんですか?

久野

できないです。運用できるのはご本人だけなので。ご遺族はその時点での総額を現金で受け取ることになります。

安田

なるほど。ちなみに私が生きていた場合は何歳まで運用可能なんでしょうか。

久野

何歳まででも運用できますけど、安田さんが何歳で仕事を引退するかが重要で。

安田

私はもう死ぬまで働く予定です。じゃあ生きている間はずっと運用して、死んだら現金が遺族に残るのがベストですか。

久野

それだとちょっと課税額が増えてしまいますね。

安田

そうなんですか。

久野

はい。70歳まで積み立てると非課税で運用できるのは75歳まで。なので75歳になったら20年分割で受け取りという選択がいいと思います。

安田

20年分割だと何がいいんですか。

久野

この20年間も非課税で運用しながらもらうことができます。安田さんが生きていれば。

安田

75歳から20年は生きてない可能性が高いですね(笑)途中で死んじゃったらどうなるんでしょう。

久野

20年分割もその時点で終わります。

安田

なるほど。つまり20年分割で運用しながら、もし死んじゃったらその時点で遺族にまとまった現金が支払われると。

久野

そうです。でも20年分割ってすごいんですよ。少なめに年利5%で計算しても、今の賭け金(5.5万円)を15年間積み立てると70歳の時は1470万円になりますよね。

安田

おお!そんなになりますか。

久野

それを20年間、年5%で運用しながら取り崩すと1470万円がなんと2300万までいくんです。

安田

なんと!頑張って20年間生きないといけないですね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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