第262回「エンジンがなくなる日」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第261回「人手不足のいく末」

 第262回「エンジンがなくなる日」 


安田

ホンダが子会社を売却しちゃうそうです。

石塚

八千代工業ですね。

安田

有名企業なんですか。

石塚

八千代工業は創業者の本田宗一郎さんの頃から付き合っている「仲間みたいな会社」です。

安田

ということは、かなり資本も入ってる。

石塚

完全子会社ですね。本田技研工業が過半数を持ってると思います。

安田

つまりファミリー企業を売っちゃうって事ですか。一心同体だった関連企業。

石塚

自動車業界って昔からシビアなんですよ。政府の庇護もなくグローバル競争に晒されてきたから。

安田

そうなんですか。

石塚

経営トップはもう危機感しかないでしょう。自ら世界のEV化を見てるから。

安田

最終的にハイブリッドは残るとも言われてます。EV化したところでその電気も火力発電で作ってるわけで。

石塚

オリンピックと同じですよ。北米やヨーロッパが有利なようにルールを変えてくる。

安田

環境問題ではなくそちらが目的ですか。

石塚

もう世界的なルールとして内燃エンジンじゃダメってことです。水素か電気で動く車じゃないと世界では売れない。

安田

ガソリン車はまったく売れなくなるんですか?

石塚

ゼロではないけどホンダは無理ですね。台数がそこそこ多いから。マツダのように「2%でいいんだ」となったら、高性能ガソリンエンジンを作り続けるのもありです。

安田

つまりホンダはEVに振り切るしかない。内燃型のエンジンはもう作らないってことですか。

石塚

おっしゃる通り。だから八千代工業を売却しちゃうわけです。

安田

本田宗一郎さんがレースに出るために作った会社なのに。エンジンのホンダと言われてたのに。電池のホンダになるわけですね。

石塚

電池は他から調達するだけなので。

安田

じゃあ何屋さんになるんですか。

石塚

そこが難しいとこですよ。社長も悩んでると思います。

安田

OBにも責められそうですよね。

石塚

社長の気持ちを代弁すれば「いつも本田宗一郎の話ばっかり。何年前の話だ。今はそんな甘っちょろいこと言ってられねえんだ。八千代工業だって売るんだ」って。

安田

ちなみに売られた八千代工業はどうなるんですか。

石塚

いったんインドの会社が引き取って、その子会社にまた売るみたいですね。オランダの自動車部品の会社に。

安田

そこまで決まってるんですね。つまり八千代工業さんは、日本でインドの子会社として部品を作り続けると。

石塚

資本上はそうですね。

安田

すごい時代ですね。

石塚

まあ自動車って昔から最適調達&グローバルサプライチェーンだから。メイドインどこなのか分からない。部品は世界中で作ってるし、世界中で組み立ててるし。

安田

今に始まった事ではないと。

石塚

貼ってあるマークの国籍は日本だけど、これ何製なのかって言ったら、中南米産とも言えるし、アフリカ産とも言えるし。

安田

車ってそういう商品なんですね。

石塚

BMWだってドイツで組み上げてるのなんて、ごくごく一部だけですよ。あとは全部アフリカとかじゃないですか。

安田

先日ラルフローレンのおしゃれなシャツを買ったら、東南アジア製でした(笑)

石塚

Made inマレーシアとか。

安田

シンガポールとか。パキスタンとか。今やアメリカで作ってるラルフローレンなんて見ることがない。

石塚

イギリスのバーバリーにしても「アジアじゃんこれ」みたいな。

安田

車は昔からそうってことですね。

石塚

イギリスのレンジローバーもインドのタタ自動車の子会社ですよ。

安田

そうなんですか。インドってまだまだ途上国のイメージでしたけど。

石塚

インドはぐんぐん伸ばしてます。人口も伸びてるし。

安田

インドではガソリンエンジンのニーズがまだあるんですか。

石塚

いわゆるグローバルサウスと言われているところは、一気にEVなんて無理なので。遅れてるところで勝負するって手もあります。

安田

それならホンダがインドで売ればいいじゃないですか。

石塚

そんな簡単ではないです。そもそも遅いんですよ。そこに踏み込むのが。

安田

ホンダも富士フィルムみたいに全く違う業種になるかもしれませんね。

石塚

どっち行くんでしょうね。デジタル化するってことは家電製品と一緒で「品質性の差」がなくなるので。

安田

石塚さんの予想はどうですか?

石塚

ホンダは今ジェットに力を入れてます。空飛ぶ車とかに行くんじゃないですか。

安田

空飛ぶ車もドローンみたいになっちゃうと、電池とプロペラで出来てしまいます。

石塚

そうなんです。ホンダは次のモータリゼーションをやろうとしてるけど簡単ではない。こういう時代の経営者は大変ですよ。もう夜も眠れないと思う。

安田

これってトヨタも全く同じ悩みを抱えてるんですか。

石塚

トヨタはもっと台数があるからさらに大変で。水素で出来ないかって話をやってますね。

安田

水素ですか。

石塚

水素とEVと。トヨタは両方にベットしてます。

安田

私がアメリカにいた頃はホンダ車がすごい人気だったんです。エンジンの音もかっこいいんですよ。

石塚

カッコいいですよね。分かります。

安田

だけど電気自動車になるとエンジン音もないし。

石塚

電気自動車でも乗り味というのがあるらしいです。ホンダやBMWの電気自動車はやっぱり「おお」って感じらしいですよ。

安田

この前テスラに初めて乗せてもらったんですけど。なんかiPadみたいなのが真ん中にドンとあって。もう車であって車でない感じ。 

石塚

乗り心地は悪くなかったんじゃないですか。

安田

悪くなかったですね。ただ、なんか車って感じはしませんでした。

石塚

ほう。どんな感じですか?

安田

ガラケー時代に出てきたスマホのようなイメージ。

石塚

なるほど。一気にそちらに流れる可能性もあるってことですね。

安田

便利さとか求める機能が根底から変わっちゃう気がします。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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