第78回 家は買う時代から選ぶ時代へ

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第78回 家は買う時代から選ぶ時代へ

安田

「家が売れなくなってきている」ってよく聞くようになりましたが、人口が減っているのだからある程度は仕方ないと思うんです。


渡邉

うーん、確かに。実際、新築の着工数が減っていることと無関係なはずないですからね。

安田

そうそう。さらに言えば、新しく建てる一方で空き家がどんどん増えている。こんな状況なんだから、無理に新築しようとせず、たくさんある空き家をリノベーションすればいいじゃないかって思うんですけど。


渡邉

やっぱり日本人の「新築信仰」は根強いんですよ。「一生のうちで一度は自分で家を建てたい」と思ってしまう。

安田

確かに「ついに一国一城の主だ!」みたいな価値観がありますもんね。でもそれってなぜなんでしょうね。家を持ちたい、しかも新築がいい。そこにこだわる理由が気になります。


渡邉

戦後の国策が大きく影響していると思いますね。「終身雇用」と「家」、この2つがセットになって打ち出されていたから。

安田

ああ、なるほど。会社に入って数年したら、ローンを組んで家を建てるのが当たり前。そんな空気でしたもんね。でも今は労働市場の流動化が進んでるじゃないですか。つまり「終身雇用」は既に崩壊している。それでも家を建てたいと思う人が多いのは、なんだか不思議で。


渡邉

言われてみればそうですね。終身雇用が過去のものになったのに、「家を持つ」という考え方だけが残ってしまっている。

安田

そうそう。まぁ、資金に余裕がある人が現金で建てるならわかるんです。でも皆さん35年ローンとかを組んでまで建てている。それってリスクが高すぎませんかね。繰り返しになりますが、もっと中古住宅に目を向けてもいいような気がするんですけど。


渡邉

それでいうと、日本の住宅市場には中古住宅に対する評価がまだ根付いていないんです。例えば車は違いますよね。中古だろうが、走行距離とか整備状態など評価基準がしっかりしていて、ちゃんと適正な値段がつく。でも中古住宅、特に築40年、50年経ったものの価値を評価する基準は未だに整ってないんです。

安田

ははぁ、なるほど。確かにそういう状況だとあまり気軽に手は出せませんね。「開けてみなけりゃわからない」って感じというか(笑)。


渡邉

そうなんです(笑)。だからこそ評価制度を整えていくことが急務なんです。そのあたりは海外に比べてすごく遅れてしまっているので。

安田

ああ、確かに海外では「家を中古で買う」って当たり前ですもんね。私もアメリカに住んでいたことがありますが、土地だけでなく、家自体にもちゃんと値段がついていましたよ。どれだけ快適に住めるかきちんと価格に反映されていて。

渡邉

そうそう。ちなみに日本では住み始めた瞬間から家の価値がどんどん下がってしまう「経年劣化」という考え方が一般的ですが、海外ではむしろ逆なんです。「経年良化」といって、年月が経つほど家に味が出て価値が増すという考え方なんですよ。

安田

へぇ、年月が経つほど良くなるっておもしろいですね。…でもそれでいうと、日本でも昭和初期までは「リユース文化」じゃなかったですか? もっと遡れば、江戸時代には古いわらじを集めて肥料にするみたいなことが当たり前だった。いつから「経年劣化」の文化に変わってしまったんでしょうね。


渡邉

それはやっぱり、先ほど話した「終身雇用×新築」っていう国策のせいじゃないですかね。なんとなく変わっていったわけじゃなく、政治によって意図的に変えられたんだと思います。

安田

ふ〜む。ということは、日本人の新築好きは戦後の刷り込みってことになりますね。つまり本当に新築が好きなわけじゃない。そうなるとどこかで「新築離れ」が起こる気もしてきます。「昔ながらの家をリフォームして住む方が素敵だよね」という価値感が広まっていくかもしれませんよ。


渡邉

ああ、既にその兆しは見え始めてると思います。若い世代を中心に、リノベーションを選ぶ人も増えてきてますし。あの無印良品も古い団地をリノベーションしていたりしますから。

安田

確かにマンションだとリノベーションを検討する人が増えてきている印象です。でも一戸建てではまだあまり聞かないですよね。


渡邉

確かにそうですね。地方だとそもそも土地が安いので、建てた方が手っ取り早いという人も多いんだと思います。ただ最近では資材価格の高騰もあって、新築を買いたくても買えないという人が増えているとも聞きます。

安田

へぇ、なるほど。でもそれがリノベーションや中古住宅など、新築以外の価値を見直すきっかけになるかもしれませんよ。そうやって住まいの選択肢が増えていくのがすごくいいことだと思いますね。


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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