第374回 裁量労働制はどこまで広がるのか?

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第374回「裁量労働制はどこまで広がるのか?」


安田

成長戦略会議の分科会で「営業や経営コンサルの裁量労働制を認めよう」という動きが出ていまして。これはどういう意図ですか?

久野

本人の裁量で労働時間も決めてやっていく仕組みですけど、裁量労働制ってめちゃくちゃ要件が厳しいんですよ。業種もすべて決まっていて。

安田

それは正社員の話ですか?

久野

もちろん正社員であることが前提です。

安田

経営コンサル職の正社員ってイメージが分かんないんですけど。

久野

経営コンサル職の正社員は結構いますよ。

安田

なるほど。自社に経営コンサルしてくれる人ではなく、他社に経営コンサルとして役務提供している人ですね。確かにその職種はたくさんいますね。

久野

たくさんいます。

安田

コンサル会社って残業や時間外勤務がすごいですもんね。それを時間制ではなく裁量労働制にしようと。

久野

裁量労働制には2種類ありまして。専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制があるんですよ。

安田

どう違うんですか?

久野

専門業務型採用労働制は業種が決まっていて。研究開発、デザイナー、SE、弁護士、コピーライター、みたいな職種ですね。

安田

なるほど。成果物が決まっている仕事ですね。イメージしやすいです。

久野

それに比べて企画業務型裁量労働制度はめちゃくちゃ導入が難しくて。たとえばテレビのプロデューサーとか。同じ職種に社員もいなきゃいけなくて。

安田

社員がいなきゃいけない?

久野

要するに「自分の意思で選んだ」ということが重要でして。裁量労働制は「下手をすると経営者の働かせ放題」になるという認識なので。

安田

経営側が勝手に「あなたは裁量労働制です」と決めても認められないと。

久野

本人が望んでいないのに裁量労働制にはできない。それを変えていこうという動きですね。高市さんはむちゃくちゃ前向きです。

安田

そうなんですね。

久野

労働法学者の中には「そんな権利を経営者に与えたら残業させ放題になる」って反対する人もいて。バチバチやってます。

安田

私も昔は営業マンをたくさん抱えていて。確かにみんな残業していました。数字目標を達成するために昼間は営業して、企画書や提案書は夕方から作らざるを得ない環境で。

久野

そうなりますよね。

安田

だけど今は営業マンでも時間外手当を払うのが大前提ですよね。

久野

そうです。ただ裁量労働にすると時間外手当を払わなくてもよくなっちゃうので。

安田

ですよね。

久野

要は管理を放棄する形になる。現実的に導入するのは厳しいと思いますけど。

安田

そうですかね。1日3時間で人の倍ぐらい成果を出せる営業マンなら合っていると思いますけど。

久野

そういう人はだいたい独立していきますよね。経営コンサルは独立が難しいみたいですけど。

安田

そうなんですか?

久野

大手コンサルティング会社を独立された方って、あまり上手くいってない人が多いんですよ。

安田

大手の看板がないと仕事が取れない?

久野

そういうことじゃないですか。特にクライアントが大きかったりすると。

安田

大企業は小さな会社とは取引しないですからね。

久野

そういう意味では中小向けのコンサルティングの方が独立しやすいと思います。

安田

確かにそうですね。経営者と直接繋がっていれば仕事ももらえそうですし。「今までより安い金額で受けます」となったら依頼する経営者はいますよ。

久野

あとはその人がちゃんとアップデートしていけるかどうか。手を変え品を変え色々サポート出来るのが組織の強さなので。

安田

独立してからアップデートされない人って多いですよね。ちなみに今、大手の経営コンサル会社も残業手当を払っているのでしょうか?

久野

固定残業という形で入れてると思います。

安田

固定残業はOKなんですか?

久野

契約書に明記したり、就業規則を定めれば問題ないです。

安田

固定残業がある会社って「ブラックっぽい」と言われていますけど。

久野

そんなことないと思いますよ。いわゆる新卒人気企業の数社も固定残業は入っているはずです。

安田

そういう会社はそもそも初任給が高いじゃないですか。40万円に固定残業代が入っているのと、25万円に入っているのとではイメージが全然違います。

久野

入ってる時間にもよるでしょうね。60時間とか80時間入っているところはさすがにブラックだと思います。最低賃金を割っているケースもありますから。

安田

何時間ぐらいまでが健全と言えるんですか?

久野

元々労基法で年間の残業上限は360時間と決まっておりまして。

安田

年間360時間ってことは1日1時間半ぐらいですか。

久野

そうですね。特別条項付き三六協定を出すと延長出来るんですけど。普通に考えれば30時間ぐらいが妥当じゃないですか。

安田

月30時間まではまともな会社だと。やはり1日1.5時間ぐらいですね。それ以上残業させている時点で今の時代には合わないと。

久野

そうなりますね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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