第156回 自販機消滅から考える、安売り競争の末路

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第156回 自販機消滅から考える、安売り競争の末路

安田
最近、街角から自動販売機がどんどん消えていっているの、ご存知でした?

鈴木
あー、ニュースでもやってましたね。ポッカ…サッポロホールディングスが自動販売機事業から撤退するって。
安田
そうなんですよ。自販機が生命線でもあるダイドードリンコ株式会社も、どんどん自販機の設置数を減らしていくみたいですし。自販機事業は全然儲からなくなっているようですね。

鈴木
コカ・コーラさんは撤退しないって言ってるようですけど、あれはブランディングの意味合いも強いんでしょうね。
安田
でしょうね。しかもコカ・コーラさんだったら仮に自販機が全部なくなっても、流通経路はいっぱいある。ところが自社の商品を売る場として自販機がメインになっている会社…例えば大阪の『サンガリア』なんかは、自販機でモノが売れないとなると大ダメージですよね。

鈴木
確かになぁ。実際、自販機の台数ってどれくらい減っているんでしょうね?
安田
10年前は16万5000台あった自販機が、今は7万5000台。つまり半分以下まで減っちゃったんですって。

鈴木
半分か…。でもぶっちゃけた話、スーパーやドラッグストアの方が断然安いから、わざわざ自販機で買おうという気にはなかなかなれんよね(笑)。
安田
まさにそうなんですよ! 自販機って昔から安くはなかったけれど、コンビニがない時代は「24時間365日、いつでも飲み物が買える」というのが大きな価値だったわけですよ。

鈴木
そうやね。高いけど便利だから買っていた。でも今は自販機のすぐ隣に小売店があるからなぁ。それで言うと、最近はコンビニで買う人も少なくなっているんじゃないですか? コンビニってほぼ全ての商品が定価ですもんね。
安田
仰るとおりです。コンビニは24時間営業で便利だっていうのを売りにしていましたけど、今は朝早くから夜遅くまで開店しているドラッグストアもたくさんあるんですよ。しかもドラッグストアは安いから、みんなそっちで買い物しちゃうんです。

鈴木
そう考えると、日本の消費者って「安い」と「便利」が両立していないと満足しないような気がしませんか?
安田
確かに。普通だったら「便利になった=サービスが付加された」分、ちょっと高くなるのは当たり前のことなんですけど、「安くてサービスがいい」というのが当たり前に思われすぎているんでしょうね。

鈴木
そうそう。でも結局僕も、送料無料・翌日配送をしてくれるAmazonで買い物しちゃってますもん(笑)。本来だったらすぐ届けて欲しいなら送料は倍くらい払わなきゃいけないのに。
安田
わかります(笑)。自分はその価格で配達はしたくないけど、自分が頼む時には少しでも安く…て思っちゃうなんて、やっぱり人間はわがままですね(笑)。とは言え、人が対応してくれるサービスはもう限界のラインに来ています。

鈴木
そう考えると、自販機なんて無人で運営できるんだから、今こそもてはやされそうな気もしますけど…。現実は逆なんですね。
安田
先程もお話に出ましたが、最近はやはりドラッグストアがその枠をどんどん奪っているんだと思いますよ。それにしてもドラッグストアってどうしてあんなに安くできるのか、不思議でしょうがないんですよ。どういうカラクリがあるんでしょう?

鈴木
ドラッグストアは薬が売られている場所じゃないですか。だから薬が売れればしっかり利益が出る。つまり裏を返せば、薬以外は利益ゼロでも別にいいという発想になっているのかもしれないですね。
安田
なるほどなぁ。最近は徐々にコンビニでも薬を取り扱っているところが増えていますし、そのうちドラッグストアとの境界線もどんどん曖昧になりそうですね。

鈴木
で、安売り競争はますます加速していく、と。…いやぁ、この状況の行き着く先を想像すると、ちょっと不気味ですよ。
安田
本当にね。とは言え、一度この安さを知ってしまったら、もう戻れないですし(笑)。

鈴木
確かに(笑)。一方で、人の報酬はどんどん上がっていますよ。特に技術者などのいわゆる「ブルーカラー」の給料がすごいことになっているらしいじゃないですか。
安田
そうですね。電気工事士の管理職で年収1000万円とか、電気の保安検査する仕事なんて、フリーランスで2〜3000万円も稼いでいる人もいるらしいです。

鈴木
3000万円! それはすごい。「手に職」がある人が稼げる時代が戻ってきたわけですね。
安田
ええ。サービスはどんどん安売りされていくのに、専門技術はどんどん高騰していく、と。…今後数年で、世の中の常識が根底から変わっていきそうな予感がしますね。

対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

感想・著者への質問はこちらから