第373回 企業型確定拠出年金について

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第373回「企業型確定拠出年金について」


久野

いよいよ企業型DC(確定拠出年金)の上限が上がります。

安田

いつから上がるんですか?

久野

掛け金が上がるのは2027年1月分からです。上限5万5000円が6万2000円になります。月々7000円なので年間8万4000円増えます。

安田

これまで年間66万円だった掛け金が74万4000円になると。

久野

そうです。結構大きいですよ。それともう一つ大きな法改正がありまして。iDeCo個人型の掛け金の上限が2万3000円から6万2000円に変わります。

安田

すごいアップ率ですね。

久野

はい。個人型と企業型の差が無くなります。

安田

久野さんがお勧めしているのは企業型の確定拠出年金ですよね。取扱数が全国一位でしたっけ?

久野

はい。ウチは総合型と呼ばれるSBIぷらす年金という商品を扱っておりまして。実績は全国一で5,500社です。日本全体で今6万社ぐらいです。

安田

すごいですね。

久野

ただ全体の導入シェア率はまだ2%程度なので。
現場の肌感だと中小企業だと100社お声がけして1社やってるかやってないかという感覚です。

安田

ある意味すごいブルーオーシャンですね。

久野

そうですね。経営者勉強会で隣の人に声をかけてもほぼ知らないです。

安田

知らないからやっていない、というのが大きな理由ですか?

久野

そう思います。

安田

知ってたらやらない理由がないですもんね。私も教えてもらってすぐに始めました。社会保険料も安くなるし、経営者自身の節税や安心にも繋がるし。

久野

普通に考えたら経営者は絶対に入った方がいいと思います。

安田

絶対に入るべきですよ。私ももっと早く知りたかったです。

久野

求人を考えても入ったほうがいいです。月5000円でも社員に掛けてあげれば採用力がかなりアップします。こういう会社はまだまだ少ないので。

安田

ちなみに掛け金の上限までやってる人は何%ぐらいいるんですか?

久野

経営者は上限までやる方が多いです。逆に従業員で上限までやれる方は少ないですね。部長・課長クラスでもそんなにいないと思います。そこまで余裕がないというか。

安田

でも皆さん手取りの中から貯金するじゃないですか。それだけ余裕があるってことですよね。手取りから貯金するより遥かにメリットがあると思うんですけと。

久野

はい。納税してから貯金するより絶対にお得です。ただ資金の使途にもよるんですよ。お子さんがいると学校資金も必要になってくるので。

安田

なるほど。確定拠出年金は60〜70歳までは現金化できないですもんね。

久野

老後への蓄えならこれ一択ですけど。なので皆さん、学費のかかる時期を超えたら掛け金を増やす傾向にありますね。

安田

子供ができる前の世代はどうですか?若い頃に上限まで掛けておけば老後は安心ですけど。

久野

若い頃って使いたいこともいっぱいあるじゃないですか。せめてボーナス分ぐらいをDCに入れておけると老後資金も安泰なんですけど。

安田

確かに。若い時は老後のことなんて考えないですからね。「70歳まで使えない」って言われると考えてしまいそうです。

久野

その割に皆さん、若いうちから積み立て式の生保には入るんですよ。

安田

あれは不思議ですよね。積み立て貯金みたいな感覚で生保に入りますよね。確定拠出年金の方が断然お得なのに。

久野

はい。国が管轄している制度なので信託報酬も安くて投資効率がすごくいいんですけど。

安田

なぜ日本人は生保にばかり入るんでしょう。

久野

そもそも金融教育を受けていないので。金融マンに払われる手数料なんて皆さん知りませんから。

安田

生保会社があれだけ立派なビルを建てているってことは、それだけ利益を得ているということですよね。

久野

そうなんですよ。

安田

特に経営者はもっと勉強したほうがいいですよ。私も知らなかったですし。これ自己破産しても差し押さえられないんですよね。

久野

はい。差し押さえ禁止債権です。従業員も自分の未来を守ることに繋がります。たとえば業績が悪くなったら退職金もどんどん減っていくわけじゃないですか。

安田

そうですよね。払われるかどうかもわからない。

久野

60歳定年の会社に勤めていて59歳で会社倒産がしたら0ですからね。DCだったら会社が倒産しても自分のお金として守られます。

安田

経営者も従業員も守られるってことですね。会社に何かあった時の貯金みたいなもので。そう考えると中小企業は絶対に入っておくべき制度ですね。

久野

そうなんですよ。「ウチは絶対に30年後も安泰だ」って言える社長はそんなにいないはずで。

安田

転職しても次の会社で引き継がれるんですよね?

久野

次の会社がこの制度に加入していれば引き継がれます。だから転職する時に制度がある会社を選ぶ傾向にあります。

安田

どう考えても中小企業には必須ですね。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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