桶職人なら桶を仕上げなくてはならない。もちろん水漏れなどしない桶。使い勝手が良く、長持ちし、使えば使うほど手に馴染んでくる桶。ここまで仕上げてようやく対価をいただける。これが仕事の原点である。いつから人は1時間働いたら1時間分の報酬を得ることが出来るようになったのだろうか。
会社の誕生は労働を根底から変えてしまった。労働者は言われたことを、言われた時間内に、言われた通りにこなせばいい。成果が出ようが出まいが働いた時間に対して報酬はきちんと支払われる。労働者にとってはとても安心で、とても残酷な制度だ。言われた通りに動いていれば桶は完成し売れていく。
仕事とは本来、相手が困っていること、欲しがっていることへの価値提供である。自分では出来ない力仕事や、道具作りを手伝ってもらう。心が喜ぶ衣服のデザインや歌声を届けてくれる。そのお礼として感謝の言葉だけでなく「自分ができること」でお返しをしてきた。それが仕事の原点である。
人から必要とされ、感謝され、お礼の品を手渡され、自分の役割と生きがいが重なっている人生。その中心にあったのが仕事だ。今どき「仕事が生き甲斐だ」などと言おうものなら「ワーカーホリック」「ブラック企業」と突っ込まれるが、仕事とは本来、生きがいのど真ん中に位置すべきものなのである。
人間社会に生きていて人から必要とされること、「あなたがいてくれて良かった」と言われること、これ以上の喜びと生き甲斐はない。だが現代では、仕事は「指示命令の忠実な実行」であり「時間とお金との交換」であり「ストレスや我慢の対価」となってしまった。私は会社員を卑下しているのではない。
経営者も同じなのだ。発注元からの指示を忠実にこなし、そのために人を雇用し、仕入れや人件費との差額で収益を上げる。これが仕事であると考えている経営者はたくさんいる。利益をやりがいとするのは給料目的に仕事をする会社員と同じメンタリティである。トップ自らが仕事本来の価値を見失っている。
時間を売るのではなく、指示された作業をこなすのでもなく、相手が喜ぶ価値を提供する。価値を磨き続ける。要するに自分にしか出来ない商品を生み出し続けることが「あるべき仕事」の姿なのだ。価値を提供できない会社からは顧客も従業員も離れていく。これは当然の結果ではないだろうか。
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