第392回 安くて美味しい日本の飲食

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第392回「安くて美味しい日本の飲食」


安田

サイゼリヤ、スシロー、ゼンショーなどの日本を代表する飲食チェーンですが、国内より海外利益の方が大きくなっているみたいです。

久野

そりゃそうですよ。単価も高いし、お客さんの要望も日本ほど強くないし。さらに今は為替もありますし。これから海外マーケットはどんどん拡大していきますよ。

安田

逆に日本マーケットはどんどんシュリンクしていくんでしょうね。少し価格を上げただけで来なくなるし。安くても要望は多いし。

久野

価格の割に過剰なサービスを求めるのが日本の消費者ですから。

安田

今や大手飲食チェーンは海外で得た利益で日本市場の安さをカバーしているみたいです。こんなの続くんでしょうか。いずれ日本市場から撤退していくかも。

久野

海外に行くとめちゃくちゃ楽みたいです。高くてもお客さんは来るし、喜んでくれるし。

安田

国内と比べたら夢のようですね。

久野

国内でやっていることを海外で再現すれば「どこでも勝てる」と言ってました。

安田

やはり国内マーケットからの撤退も近い?

久野

商売だけ考えたらそうでしょうね。最後は正義感とか、日本への感謝とか。日本人としてのナショナリズムが無くなったら日本ではやらないと思います。

安田

ナショナリズム?つまり貧しい日本のために、儲からないけど「安くて美味しい食事」を提供し続けると。

久野

株主が許さないでしょうけどね。

安田

そりゃそうですよ。

久野

現実的に考えれば、必ず日本でも値上げしてくると思います。サイゼリヤもちょっと値上げしましたよね。それで株価がストップ高になりました。

安田

値上げは株主にウケるんですね。

久野

はい。株主には受けます。だけど消費者には受けない。マーケットのバランスを見ながら絶妙に値上げするしかない。

安田

日本の飲食ブランドは海外でも人気がありますし。もう日本にこだわらなくてもいい気がします。

久野

そうですね。ただ「日本にお店がある」というのがブランドにもなっているので。ゼロにすることはないと思います。

安田

確かに。「日本で行ったあのお店」とか「日本で人気のあのお店」が海外の売り上げにもつながるわけで。つまり日本での出店はアンテナショップみたいなものだと。

久野

最後はそうなっちゃうんじゃないですか。

安田

今はまだ国内店舗も多いですけど。いずれ海外がメインになるんでしょうか。

久野

経済合理性を考えるとそうなると思います。

安田

国内店舗は全体の1割とか?

久野

海外マーケットはカントリーリスクもあるのでもう少し多いと思います。

安田

とはいえ国内はもうジリ貧ですよ。材料費も人件費もどんどん上がっていくわけで。どこかで利益が出なくなってしまう。

久野

値上げは必ずするでしょうね。サイゼリヤでさえ値上げしましたから。

安田

「やっと値上げ」という感じですけど。

久野

大手の場合はまだ余裕があるんですよ。「いつでもやれる」状態で周りを振り落としている状況だと思います。

安田

なるほど。じゃあ大手数社で寡占状態になったら一気に値上げすると。

久野

はい。値上げしても顧客が他社に流れない状態になれば値上げすると思います。

安田

消費者の選択肢がなくなるのを待っているわけですね。

久野

ソフトバンクの携帯もそうだったじゃないですか。

安田

確かに。安さが売りだったけど今は他社と同じになっちゃいましたね。

久野

最後はああなっちゃうと思います。

安田

個人店はどうなっていくんでしょう?日本の外食って安くて美味しい個人店で成り立っている気がするんですけど。

久野

安い個人店は生き残れないと思います。

安田

無理ですか?

久野

もう無理ですね。仕入れコストがすごいですから。お客さんからちゃんとお金を取れないお店は厳しいです。

安田

自分たちが我慢して安く提供し続けているお店もありますけど。

久野

物価高で生活が成り立たなくなると思います。ギリギリまで頑張ったとしても跡を継ぐ人はいないでしょうから、オーナーの引退と共になくなるでしょうね。

安田

残るのは「そこそこ安いチェーン店」と「高くても成り立つ個人店」だけ?

久野

そうなるでしょうね。今はその移行期じゃないですか。

安田

日本の飲食は「安くて美味しい」と言われてますけど。そう長くは続かない?

久野

いや、日本人にとって高くなるだけ。海外の人から見たら「めちゃくちゃ安い」っていうのはずっと変わらないんじゃないですか。

安田

確かにそうですね。海外では2倍、3倍の価格でも満席になるみたいですから。じゃあ大手飲食チェーンはまだまだ伸びる?

久野

各カテゴリー3社くらいになって、どんどん利益を拡大していくと思います。牛丼で3社、イタリアンで3社、蕎麦屋で3社みたいな感じ。

安田

安くて美味しい日本の個人店はもう終わりと。

久野

残念ながら厳しいと思います。年金をもらっている世代が引退したら終わるでしょうね。

安田

残念ですが、安いものばかり求めてきた消費者の責任でもありますね。無くなって初めてその尊さに気がつくのでしょう。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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