赤い出口、青い出口 第21回「中小企業の後継ぎ問題」

このコンテンツについて
自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

第21回 中小企業の後継ぎ問題

【私の入社動機】

今から20年以上前、私も就職活動なるものを経験しました。
恥ずかしながら、社会の仕組みも知らず、働くことがどのようなことかもわからず、就職はアルバイトの延長くらいに思っていました。
家庭教師のアルバイトも、焼肉屋のアルバイトも作業はこなすのですが、特別働きが良いわけでもなく、文句を言われない程度にこなしていたというのが正解かもしれません。

とはいえ、学生ながら就職先に対しては重要視するものがありました。
経営者と距離が近く、自分と会社とが、一緒に成長ができる会社です。
今、そんなことを言っている学生がいたら、「甘い」とか言ってしまいそうです。
実際は私の思惑通り、会社は急成長を遂げ、私は幾度かの首の危機を乗り越え、様々な経験をさせていただくことになります。

【そこで働く理由】

今だから言えるのですが、その頃の私がなんのために会社で働いていたのかというと、身近で仕事をしてくれていた上司や経営者のためです。そして、ウマの合わない上司のときには、会議をボイコットしたり、出社しなかったりしたものです。
ただ、生き生き働く経営者を見ながら、あんな人になりたいなとか、売上で上司を支えることに喜びを見出していたのだと思います。
現在とは考え方は違いますが、当時は会社に所属する理由としてこの人たちと一緒に働きたいと思っていましたし、このように考えている社員さんはどこにでもいると思います。

【感情は引き継げません】

かくしてそんな私も、現在は経営者のお手伝いを仕事にしています。
そして、多くの企業で後継ぎの問題が発生しています。
いわゆる「事業承継」というものなのですが、オーナー経営者は自身のご子息や、苦楽をともにした役員の方に継がせたいと思うケースがとても多いようです。

中小企業のオーナー経営者は、「事業承継」とは、自分の代わりを指名すると考えられていることが多いと感じます。
それでは、ご子息であれ、役員であれ後を継ぐ方に負荷がかかります。
後を継ぐ方にとっては、事業を継続する以外に、過去の思い出まで引き継げと言われているようなものです。
オーナー経営者が変わる場合、新たな経営者との新しい関係が社員との間で始まるのです。
中小企業にとって、オーナー経営者が変わるということは、違う会社に生まれ変わるということになります。

時折、こんな私にも事業承継についてのアドバイスを求められることもあります。
しかし前述の通り、ちょっと勘違い社員だった私にとって、上司や経営者が変わるというのは、その会社に所属する意義にも関わることでした。
「社長が退任したら、人がごっそり辞めちゃいますよ」
なんてことは、自分の感情に任せて言うことはできません。
ですから、未だに上手なアドバイスはできていません。
思惑通りの承継方法はなさそうですが、一つだけお伝えするようにしています。
「社長を退任したら、それはもう違う会社ですよ」と。

 


- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

感想・著者への質問はこちらから