第48回 オーナー社長のエンディングノート

このコンテンツについて
自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

オーナー社長のエンディングノート

【ゴルフをする理由】

この10年、ゴルフをすることがなくなりました。
いや、嫌いというわけではないのです。
出かけるのも、スポーツをするのも、
競争するのも、みんなでワイワイするのも
好きなのですが、
ゴルフをしないようになりました。

それまでは、
ゴルフ狂とでも言うべき友人が、
自分に関わる人を集めてコンペを主催していました。
私もそこに参加していたので、
結構頻繁にプレーする機会があり、
とても楽しくゴルフをしていました。

しかし、その友人の転勤とともに
コンペも開催されることがなくなり、
ゴルフをすることがなくなってしまいました。
そして、そのまま今に至ります。

そう考えると、
私はゴルフが好きなのではなくて、
その友人に会いに行っていたのだなと思います。
もし、その友人に誘われなければ、
ゴルフをもっと早く
やらなくなっていたのかもしれません。
私の友人がいなければ、
ゴルフは継続しなかったのです

私達の周りには、
この人がいてはじめて成り立つ、
というつながりが結構あるのです。

【実現しない事業承継】

オーナー経営者にお会いすると、
最近、事業承継という言葉をよく聞きます。

事業承継というのは、
後継者の指名から、所有権の移転、
経営権の引き継ぎなどを指すそうです。
ハードからソフトまで。
現金からあうんの呼吸まで。
そんな、大掛かりな引き継ぎです。

この場合の事業承継は、
今の現状をそのまま引き継ぐことを
前提にお話をされています。

私のゴルフのくだりを考えると
事業承継なんてできっこないよなと
思ってしまうのです。

現実としては、
オーナー経営者と付き合う人がいて、
経営者が変われば、
離れる人がたくさんいると思えます。

オーナー社長がいるから、
従っている社員がいます。
オーナー社長だからこそ、
付き合っている取引先がいます。
オーナー社長がいなければ、
会社と関わりたくない家族がいます。

オーナー社長はこれまでの会社を
まったく変えずに継承することを望まれますが、
それは不可能なのです。
オーナー社長が去ることで、
会社は形を変えながら残っていくのです。

そう考えていくと、
事業承継というのは、
オーナー社長としての遺書なのだろうと
思えてきます。

自分が思った理想の会社像を、
引退したあとも誰かに
引き継いでもらう仕組み。
実現不可能だとわかっていても、
それを実現したいという
エンディングノートなのでしょう。

事業承継は、
オーナー社長のオーナーとしての出口です。
そして、社長としての出口です
しかし、会社は続いていきます。
辞める社員も、新入社員もいます。

オーナー社長が、
すべての関係をさっぱり切るということが、
事業承継なのかなと
最近は考えています。

 

 

著者の他の記事を見る


- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

感想・著者への質問はこちらから