第69回 事業承継の難しさ

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

【寿命の違い】

最近、中小企業の事業承継の事例を取材しています。
http://bsuccession.com/case/
取材をすすめていくと、
金銭欲や出世欲、依存、無責任などが垣間見え、
なかなか、ハッピーエンドというような
事例に遭遇しません。

ただ、面白いのは、
大多数の人は承継後も会社を存続して欲しいと、
思っているということです。

経営者が引退するときは、
経営者としての寿命を意味します。
しかし企業は、
関わる人が存続すれば、寿命にはなりません。

事業承継の問題は、この寿命の違いが
引き起こしていると考えられます。

【投資と回収】

オーナー経営者は、
企業の発展のために様々な手を打ちます。
数カ月後に売上を上げるために広告をしたり、
10年後に成長するために、
人材を採用したり。
規模を拡大するために工場を建てたり。

経営者は余命宣告された病床からでも、
退任日が決まってからも、
将来の投資を決断し続けます。
経営者の仕事は、投資し続けることだからです。

しかし、回収することなく
経営者の寿命を迎えることが
事業承継となります。

【未来への投資が問題に】

ここで問題になるのは、
経営者家族と社員の関係性です。
ご子息や親族が社員で後継者の場合は
まだ良いのですが、
経営者が突然なくなったときや、
家族が経営に無関係の場合は、
大きな問題が起こりがちです。

というのは、
経営者はしらずしらずのうちに、
家族を巻き込んだ投資をしています。
そうなると、
家族は経営者の投資を回収するために、
会社の経営に関与しなくては
いけなくなります。

社員からすると、
業界も経営も知らない人が、
ある日突然やってきて、
上司となるのは違和感があり、
将来が不安になります。

家族からすると、
よくわからない経営権を相続して、
莫大な借金の連帯保証までさせられるのは、
迷惑以外の何ものでもありません。
ただ、食べていくための手段として、
引き受けなければならないのです。

【時間では解決しない】

時々、経営者である父親の急死によって、
主婦から経営者へと華麗に転身し、
成功した事例がニュースになります。
ただ、これはまれな事例です。

殆どの中小企業の場合、
後継者が決まっていない事業承継は、
存続に苦労されるようです。

時間で解決できないことなんて、
誰もがわかっているのですが、
結構な会社で準備がされていません。

経営者の出口と会社の出口は、
経営者の出口のほうが
だいたい近くにあるものです。
トラブルにならないためには、少なくとも、
家族と会社がかんたんに分離できるように、
対策だけはしておいたほうがよいなと、
取材をしての感想に至りました。
https://bsuccession.com/case/

 

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- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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