第146回 「効力感」が人を辞めさせない

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第146回 「効力感」が人を辞めさせない

安田

内的報酬の上手な作り方について、今日はプロである藤原さんに聞いてみたいんです。給料アップがもう当たり前になってきていて、「安くてもなんとか採用したい」というのはもう無理じゃないかと。


藤原

そうですね。しかも高ければいいわけでもなくて、給料は必要条件に過ぎなくて、十分条件ではなくなってきている。

安田

ええ、まさに。給料が安いと辞めていくけど、高ければ定着するかというとそうでもない。辞める理由にはなるけど、来てくれる理由にはなかなかならない。だからこそ経営者はもう内的報酬からは逃れられないと思うんです。


藤原

同感です。利益は出ているのに継いでくれる人がいなくて廃業するケースも出てきていますし。

安田

人不足倒産だけじゃなく、人件費を上げないと人が来ないからどんどん上げていって潰れるという「人件費倒産」も増えてきていますからね。安い給料しか払えない事業体は、厳しい言い方ですけど、もう継続は難しいんじゃないかと。


藤原

そうですね。とはいえ、給料をどこまでも上げ続けるわけにもいかないわけで。

安田

そうなんですよ。私の知り合いで、元ワイキューブの社員だった北島さんという方が会社を作って10年で100億以上のグループにしているんですが、毎年30人近く採用しても事業の成長に追いつかなくて、本気で人が足りないと言っているんです。


藤原

すごいですね。定着率も高いし、皆が事業を作るというやりがいを持って働いているということでしょうから。

安田

そうそう。それこそがまさに正しい人不足だなと。誰も来てくれないのは人不足以前の問題で。こういう時代に内的報酬をどう作っていくか、そこを聞きたいんです。


藤原

難しいテーマですけどね。あえて一言で言うなら「効力感」という言葉を私はよく使います。力が効いていると書いて効力感。自分が何かをやって、それが何かにつながっている。その実感が持てなくなったときに、人はやりがいを失っていくんだと思います。

安田

なるほど。昔のフルコミッションの営業会社なんかも、ある意味では効力感がすごかったですよね。売れば売るだけ自分に返ってくるという。


藤原

あれはあれで効力感なんですけど、自分のためだけではもう頑張りきれないという人も増えていて。誰かの役に立っている実感だったり、大手ゼネコンの「地図に残る仕事」みたいに自分の仕事が大きなものにつながっている感覚だったり。

安田

ははぁ、自分のためじゃなく、何かのためという効力感の方が今は求められていると。じゃあ「効力感」の反対はやっぱり「無力感」になるんですかね。やっても手応えがない、気力はあるんだけど反応がないみたいな。


藤原

そうですね。例えば、よかれと思って改善案を提案したのに、上司に「そんなこと考えてる暇があったらこっちをやれ」と返されてしまう。「それ考えたんだね、すごいじゃん」という言葉もなく。こういうことの積み重ねで効力感を失っていくんです。

安田

「自分はこういうことを求められてないんだ」「言っても無駄なんだ」と。まさにそういう時に感じるのが無力感なんでしょうね。私は仕事における内的報酬って、突き詰めると誰かの役に立っている実感なのかなと思っていて。


藤原

その通りだと思います。ただ組織がどんどん分業化されてくると、効力感って得にくくなるんですよ。例えば商品のパッケージングをひたすら三時間やるような仕事もあるわけで。

安田

そういう現場の人に、どう効力感を持ってもらえばいいんでしょうね。


藤原

例えば、納品先の売り場の方から「御社の製品はいつもパッケージが綺麗だから、いい場所に置きたくなるんだよね」と言われたとしますよね。それを現場でパッケージを作っている人に「皆が丁寧にやってくれているおかげだよ」とちゃんと伝えられるかどうか。

安田

ああ、お客さんの声を現場まで届けるということですね。

藤原

ええ。それだけじゃないですけど、「内的報酬を与えること」も仕事の一部にしていこうという話はよくしますね。外的報酬、つまり給料や役職は原資が有限で上から下にしか流れない。でも内的報酬は原資が無限で、どんな立場の人でも、あらゆる人に与えることができる。

安田

ああ、確かに。誰かを褒めたり、役に立っていると伝えたりするのは上司じゃなくてもできることですもんね。その一方で、その人じゃなくてもできる仕事って、どうしてもやりがいを感じにくいと思うんですよ。その人ならではの、その人だからこそ人の役に立てる部分を見つけて組み合わせることが大事なんじゃないかと。

藤原

すごく大事なことだと思います。その人ならではの仕事がある方が、内的報酬は確かに強くなりますから。

安田

そうですよね。ただ、そうなると「その人じゃないとできない」という部分がボトルネックにもなりますよね。効率とは相反する面もあるわけで。

藤原

それはありますね。ただ必ずしもセットじゃなくても、同じ流れ作業でも、その人がいると場の空気が明るくなったり、次の人がやりやすくなったりすることってあるじゃないですか。

安田

なるほど。業績には直結しないけど、その人がいることで何かが変わっていると。

藤原

ええ。間接的にはつながっていますからね。その人が場の空気をよくして、周りが生き生きと働けるようになったら、結果的にお客様の喜びにも貢献しているわけで。そういうことにちゃんと言及してあげることが大事だと思います。


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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