第55回「アラブ圏で猛禽類を飼うのはステータスなのでしょうか? ネコやイヌなど他のペットは飼うのですか?」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「アラブ圏で猛禽類を飼うのはステータスなのでしょうか? ネコやイヌなど他のペットは飼うのですか?」

   回答   

第52回コメント欄にこちらのご質問をいただきました。ありがとうございます。
今回はこれに回答してみたいと思います。

【猛禽類を飼う】
アラブではたしかに猛禽類を飼うイメージがありますね。
種類としてはファルコン(ハヤブサ)がほとんどのようです。
アラブ圏といっても、湾岸諸国で飼われることが多く、例えばエジプトなどではお金を持っていても飼うことは少ないと聞いています。
価格は種類やサイズ、ブリーダーなど条件によって大きく変わり、平均的には一羽あたり数万円〜数十万円ですが、中には数千万円するケースもあるとのこと。
こういう高額の取引が行われたときは、たいていニュースになります。


(↑サウジアラビアで約1800万円(当時のレート)で落札されたファルコン。2020年10月ロイター記事より)


(↑こちらは当時のレートで5000万円超え。飼われているのは主に湾岸諸国と書いたが、これはリビア。パキスタンの記事より)

エサは生肉がメインなので、メンテナンスも年間数十万円とそれなりのお金がかかります。
そのため、ご質問にある通りアッパー層にとってのステータスとなっています。

他にも猛獣や爬虫類などを飼っている人も一部いるようですが、あまり一般的ではありません。次は日本でも人気の高いイヌとネコにフォーカスしてみましょう。

【ネコは好感度高め】
日本と同じく、ネコは非常に可愛がられています。
街で見かける頻度も高く、親子で昼寝している光景を見ることもあります。
預言者ムハンマドに可愛がられていたという逸話もあり、ネコの印象は非常に良いようです。
自分で毛づくろいするので清潔なイメージがあり、家の中だけでなく、モスクにも入ることができます。
モスクに住みついているということで有名になったネコもいるようですが、日本のネコ駅長のようなものでしょうか?
アラブではありませんが、トルコのイスタンブールはネコが街中に溢れていることで有名で、「ネコの街」とも呼ばれます。

【イヌはペット向きではない?】
日本ではネコと並んで人気の高いイヌですが、アラブでは少し事情が異なります。
イヌは毛づくろいをしません。
自分の体を舐めてきれいにする習慣がないため、ネコにくらべると不衛生なイメージがあり、どうも宗教的にも「不衛生である」と見なされている模様です。
ネコとは違い、家やモスクには入れてもらえず、飼うとすれば庭になります。
外気温が高くなる地域なので、暑さに耐性のある犬種が選ばれます。
衛生面を考えると手入れが大変で、お金と手間が掛かるため、手軽にペットとして飼う人はそんなに多くないようです。
ただ、けっして悪い動物と考えられているわけではありません。古くから猟犬や牧羊犬として重宝されるサルーキという犬種もいるようで、イヌとの付き合いは長い歴史があります。

(↑サルーキはかなり痩せ型)

【ペット関連ビジネスは?】
こちらはGCC(湾岸協力会議)6カ国のペットフード輸入額の推移を表すグラフです。


(↑どこの国も輸入額に伸びが見える。International Trade Center Trade Map のデータより作成)

年によってアップダウンはあるものの、全体としては成長傾向にあります。
一番規模が大きいのはサウジアラビアですが、昔は非常に保守的で宗教警察の取り締まりが厳しく、イヌを例にとればパブリックスペースに連れて行くこと自体できなかったようです。つまり、外を散歩させることができない。
これはペットとして飼う上で、大きな障壁となっていたことでしょう。

そんなサウジにも、なんと最近ドッグカフェができたそうです。

上述のとおり不浄のイメージを持たれるイヌですが、動画を見る限り地元の人も飼い始めているようです。
以前に比べていろいろな面で規制が緩くなっていますから、ペット関連市場もこれから大きく伸びていくかもしれません。

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ) 

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながら中東ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。

海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

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