第156回 人が辞めない会社にするための「腹のくくり方」

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第156回 人が辞めない会社にするための「腹のくくり方」

安田

最近は、従業員が辞めてしまうことで倒産する会社が増えていますよね。


中辻

そうらしいですね。特に物流業界が大変だって聞きました。

安田

そうそう。仕事はたくさんあるのに、運んでくれるドライバーさんがいないから受注はストップするしかない。そうすると当然売上も下がり、給料もアップさせられないから、さらにまた人が辞めていくわけです。


中辻

まさに悪循環ですね…。そもそも物流業界って、3次下請とか4次下請けとか下にいけばいくほど利益が薄くなっちゃう構造ですもんね。

安田

そうなんですよ。それでね、もしも中辻さんが運送会社の社長だったら、この悪循環をどう断ち切るかお聞きしてみたいなと。


中辻

うーん…そもそもの前提として、そういう下請けの会社さんたちの価格自体に無理があると思うんですよね。というのも私自身、過去に苦い経験がありまして…。

安田

ほう、どんな経験ですか?


中辻

マメノキカンパニーを起業したての頃に、なんとかして仕事を取ってこなきゃと焦って、かなり安値で引き受けたことがあったんです。そしたら大コケしまして…。

安田

あらら…。具体的にどうなったんです?


中辻

その仕事をこなすのが私だけなら私が無理すればすむ話ですが、ウチはポスティング会社なので仕事はポスティングスタッフに依頼する必要がある。つまり無理な価格で引き受けてしまうと、スタッフさんに無理をしてもらわなきゃいけなくなるわけです。

安田

ポスティングスタッフさんへの報酬にしわ寄せがきてしまうと。


中辻

仰るとおりです。それで、安い単価でお願いしたことで手を抜くスタッフがたくさん出ちゃって、配布漏れとかのトラブルが頻発したんです。結局私が全部責任を取って、各方面に謝り倒すハメになりました。

安田

うわあ…それは大変でしたね。


中辻

ええ、本当に。無理な価格で仕事を引き受けるべきじゃないって痛感した出来事でした。運送会社さんにも同じことが言えると思うんです。最終的にドライバーさんにどれだけ利益を還元できるか…それを考えずに安易に低価格で仕事を受けるのは、経営者としてアカンやろって。

安田

なるほどなるほど。経営者は従業員にしっかり給料を払えるような仕事を取ってこい、と(笑)。


中辻

そうそう(笑)。「ウチは下請けだから」なんて言い訳してちゃダメってことです(笑)。というか普通に考えて、上から降りてくる仕事なんてそれぞれの会社で利益を抜かれているわけですから、自分の会社にしっかりとした利益を残せるほどの価格では、仕事はまわってこないですよね。

安田

本当ですよね。じゃあもし中辻さんが運送業をやるとしたら、やっぱり「単価を上げる」ことを最優先させますか?


中辻

当然そうするでしょうね。何の業界でも、もう薄利多売では生き残れないと思います。

安田

なるほど。とは言え、ポスティング業界も薄利多売なところが業績を伸ばしてきた過去もあると思います。中辻さんから見て、そういう会社って「先はないな」って思います?


中辻

はい。すごく厳しい言い方になりますけど、安さしか強みがない会社って、もっと安くやる会社が出てきたらどうすんの? って思います。

安田

確かに確かに。


中辻

ものすごい安い金額で請け負っているポスティング会社だったら、当然配布員さんたちの報酬もそんなに高くないから満足度もそれほど高くないはず。そうなるとスタッフの入れ替わりも激しくなるから、常に新人をイチから育てなきゃいけない状態になりますよね。

安田

で、質の悪い配布をされちゃってトラブルも頻発する、と(笑)。


中辻

…結局、高くついちゃいますよね?(笑) というかそもそも「安い」ってそんなに魅力的なことなんですかね?

安田

まあ多くの消費者は、そう思っているんじゃないですかね。Amazonがこれだけ伸びているのも、送料無料だからでしょうし。


中辻

あぁそうか…。でも値段だけで選ぶとリスクもありますよ。例えば『ペイント王』にも、安い会社で外壁塗装をやったんだけど2年もしないうちに塗装が剥げたり変色したりして困っているっていうお客様からのご相談がよくありますから。

安田

安さを追求していくと、クオリティ面に必ず影響が出てきますよね。


中辻

ええ。だからこそ、「いかに高く売るか」っていうのを考えなきゃいけないと思います。

安田

物流業界にも「医薬品の輸送専門」とか「女性ドライバー限定の丁寧な輸送」とかで価格を高く設定している企業もありますけど、仕事はバンバン入ってくるみたいで。だからそういう努力はいくらでもやりようがあるんですよね。


中辻

仰るとおりです。ちなみにウチの会社にも「下請けから元請けになりたいと思っているから協力してほしい」っていう相談がすごく多くて。ただ生意気なことを言わせてもらうと、考え方がぬるい経営者さんがめっちゃ多い!(笑)

安田

あはは(笑)。どんなこと言ってくるんです?


中辻

「お金はあんまりかけずにホームページを作りたい」とか言うんですよ。でもね、今まで「下請け」として仕事をもらっていた立場から、自分で営業して集客しなきゃいけない「元請け」になるのに、なんで広告費をケチってんねん、と(笑)。

安田

あー、目先の広告費をケチろうとするわけか。そこは腹をくくらないとダメですよね。


中辻

そうなんです。だからいつも「下請けから元請けになるのは、アナタが思っている以上にお金も根性もいります。覚悟ができてからまた連絡してください」って言っちゃってます(笑)。

安田

出直してこい、と。いや〜カッコいいな(笑)。


中辻

笑。でも腹をくくってウチに任せてくださった企業さんは、ちゃんとそのあとも元請けとして成功していますからね。…とは言ってもそこまで覚悟をきめてくれるのは、2〜30社に1社くらいの割合ですけど。

安田

ははぁ、そんなに少ないのか。でも確かに50万円、100万円程度で元請けになれちゃうんだったら、誰でもやりますもんね(笑)。


中辻

そうそう(笑)。だから本当に従業員のことを考えて、少しでも多く会社に利益を増やしたいと思うのであれば、経営者にもそれ相応の覚悟が必要だと思います。

安田

なるほど。耳が痛い経営者さんも多いかもしれませんが(笑)、ぜひ中辻さんのお話を参考に「腹をくくって」ください!

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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