第137回 庭木で作る「防犯と景観」の最適解

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第137回 庭木で作る「防犯と景観」の最適解

安田

中島さんの庭作りを見ていると、いわゆるブロック塀のような高い壁で家を囲うことをほとんどしませんよね。


中島

そうですね。木を植えて目隠しにすることが多いです。

安田

そうですよね。でも防犯ということを考えたら、高い壁で覆ってしまった方が安心な気もするんです。ただそれでは景観が保てない。「防犯」と「景観」という一見相反する要素を、木を使ってどのように両立させているのか、そのあたりのバランス感覚をお聞きしてみたいなと。


中島

なるほど。まず大前提として、中が全く見えないほど高い塀で囲ってしまうのは、防犯上むしろよくないんです。

安田

えっ、そうなんですか? その方が不審者も侵入するのが難しそうですけど。


中島

確かにそれはそうなのですが、逆に言えば、一度入ってしまえば外からの視線を気にせず自由に動けてしまう。

安田

ああ、なるほど。一度入られてしまったら、そこはもう犯人にとっての「密室」になってしまうわけですね。とはいえ、外からスカスカで、誰でも気軽に入れてしまうのも不安です。


中島

そうですよね。そこで「門柱」の位置で調整するわけです。岐阜は車社会なので、車の後ろあたりに少し大きめの門柱を建ててインターフォンを設置し、横に植栽を添えて、「ここから先はお庭ですよ」とちゃんとわかるようにするんです。

安田

ははぁ、物理的に高い壁を作るのではなく、インターホンの位置で「ここから先は人様の土地だぞ」という、言わば心理的なブレーキをかけているわけですね(笑)。


中島

仰るとおりです(笑)。良識のある人なら「ここから先は無断で入ってはいけないな」と自然に感じられるわけですね。

安田

なるほどなぁ。確かに玄関脇にインターホンがあると、「その場所までは入っていい」という感じがしますもんね。門柱にインターホンがあれば、それがまず防げると。


中島

ええ。さらに言えば、もしそこを越えて入っている人がいれば、周囲からも「あれ?あの人は誰だろう」と発見してもらいやすい。

安田

ああ〜なるほど。「物理的に入れなくする」のではなく、「入ると怪しく見える」状態を作ると。非常にスマートな防犯ですね。ちなみに「門柱」というくらいだから、門扉も付いているんですか?


中島

いえ、最近は門扉は設けず柱だけ、というか一つの大きな壁にすることが多いですね。中には門扉を付ける方もいらっしゃいますが、そもそも一般的な高さだと内側に手をまわして開けられてしまうので、防犯としてはあまり意味をなさないんですよね。

安田

確かに。扉が閉まっていても簡単に入ってこられてしまうと。ある程度の高さのあるものじゃないと意味をなさない。


中島

ええ。完全に囲うなら1.8メートルほどの高さが必要です。ただそこまでやると外から見て圧迫感がありますし、1.5メートルでも身長170センチ以上の人の視線は入ってきますから。

安田

なかなか難しいですね。さらに、完全に遮ろうとすると、今度は景観が犠牲になってしまう。

中島

そうなんです。それよりも木を植えて、お互いにうっすら見合えるくらいにした方が、実は防犯的にも効果が高いわけです。向こうからも中に人がいることがわかりますし、こちらも外の人の気配に気づけるので。

安田

ああ、なるほど。「見えているから入りにくい」ということですね。不審者が入っていても、近所の方が歩いていれば「見慣れない人が入っているぞ」ってすぐ気づいてくれる。それ以上の防犯となると、セコムのようなセキュリティシステムを入れるしかないんでしょうね。

中島

そうですね。あとは電気錠で制御できる高い門扉を設けるか、というようなことになります。ただそこまでやると、大使館みたいになってしまうというか(笑)。

安田

確かに(笑)。結局、物理的に完全に防ぐのはなかなか難しいということですよね。それよりも「入りにくい雰囲気」を作ることの方が大事だと。

中島

そう思います。向こうからも見られていると感じれば、入ろうという気が起きにくくなりますから。

安田

なるほど。岐阜だと近所の人が顔見知りだったりして、隣が誰かわからない都心の状況とはまた違うんでしょうね。

中島

そうですね。そういう意味ではコミュニティ自体が防犯になっている部分もあって、都会とは庭づくりの考え方が変わってくると思います。

安田

なるほどなぁ。門柱で心理的な境界線を作り、木でほどよく視線を遮りながらお互いが見え合える環境を整える。それが防犯にも景観にも一番いいバランスなんですね。


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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