原因はいつも後付け 第3回「言動の不一致が招くもの」

「リピーターが大切」と言いながら

結論を先に書くと「一杯目無料キャンペーン」は経営的に大失敗でした。

最初に書いた通り、「気にはなっていたけど、お店に来たことがなかった」という様なご新規さんも増え、一時的な集客数アップにはなりました。

ただ、問題だったのはリピート率。
一時的に増えたお客さんの数もキャンペーンが終われば、元通り。
むしろ、無料キャンペーンを実施した事で、安定しつつあったリピーターさんの信頼を失い、業績が悪化してしまったのです。

会社は創業した時から「リピーターさんの存在が何よりも大切だ」と言ってきました。
「顧客の安定こそお店の安定。」

この方針は私のお店だけでなく、商売をやってる人ならみんな同じことを考えていると思います。
「リピーターより新規の方が大切」なんていう人はほとんどいないでしょう。

でも、私が9年前にやってしまったのは、まさに「リピーターより新規の方が大切」と言っているも同然のキャンペーンでした。

言ってることと、やってることが違ってた訳です。

「初回利用の方に限り半額キャンペーン」
冒頭に挙げた、この文句。

これもまさに私がやってしまった過ちと同じ。

本当にリピーターさんが大切だと思っているなら、割引すべきなのは新規ではなく、リピーターさんのはず。
にも関わらず、むしろ新規のお客さんを呼び込むために割り引いたお金の負担を、リピーターさんの売上に乗せてしまっているお店が多いのが事実。

多くのお店が「リピーターが安定しない」という結果に悩んでいます。
ただその原因は、新規を呼ぶためのコストをリピーターに負担してもらう、という考え方そのものなのかも知れません。

集客コストで一番高いのは、「割引」。
そして、その「割引」を負担するのはリピーターさん。

集客コストで一番安いのは、「紹介」。
そして、その「紹介」をしてくれるのもリピーターさん。

「リピーターが大切」と言葉で言うのなら、「リピーターが大切」と行動で示すこと。
リピーターに対する言動が一致しない限り、売上もリピーターも安定しないのです。

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。

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