第114回 自由な環境を用意したら業績が悪化しました

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

今回のゲストは2013年に創業11年目を迎えた辻本くん。
何とか店舗数を増やしてきたものの、新たな悩みを抱えている様子。

どうやら店舗スタッフさん達から「もっと自由にやらせて欲しい」という要望が増えてきたこともあり、思い切って社内ルールの大半を撤廃してみたところ、業績が急速に悪化しているようです。

そんな状況をみて、今の辻本が思うこととは何なのか?


商売をされている方であれば誰もが少なからず「スタッフがイキイキと仕事に取り組める環境を用意したい」と思うものではないでしょうか?

これは当時の辻本くんも同じだったのでしょう。
だから辻本くんはスタッフの要望に応えるべく、「社内規則の大半を撤廃」と「スタッフによる自由な店舗経営の実現」を実行した訳です。

ただ、ここで問題だったのは、自由な店舗経営を導入した結果、業績が悪化してしまったこと。当たり前の話ですが、どんなに自由な環境を用意したとしても、利益を確保できなければ、そもそも雇用を維持することはできません。

では、業績を悪化させてしまった原因とは何だったのでしょうか?

その答えは、もちろん店舗スタッフの能力などではありません。
今から思う、業績悪化の一番の原因。
それは当時の私自身が「自由の使い方」を分かっていなかったこと。

当時の私は、できる限りルールをなくし、自由にすればするほど各店舗からアイデアが生まれてくるものだと考えていました。

でも、実際は全く逆でした。
自由にするほど、各店舗で考え、決めなくてはいけない事項が増えてしまい、決定事項が増えすぎた結果、逆にアイデアが出にくくなり業績悪化に結びついていたのです。

私たち店舗オーナーは、「自分は誰からもルールを押し付けられることなく、自由にアイデアを考え、それを実行している」と考えてしまいがちです。ただ、よく考えてみれば、私たちは常に「限られた資金」、「出店できる規模や立地」といったある種、無意識の制約の中で商売を考えていることに気づきます。

つまり、私たちにアイデアが出てくるのは決して自由だからではなく、むしろ限られた条件という「不自由」の中で解決策を考えるからこそ、アイデアが出てくるのではないでしょうか。

そう考えるのであれば、当時の私がやるべきだったのは、各店舗からアイデアが生まれやすい制約を考え、その制約の中に自由を設けることであり、自分自身が使い方を分かっていなかった自由を各店舗に押し付けていた時点で業績が悪くなるのは必然だった、と今では思うのです。

 

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから