第138回 分かりづらい商品

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

2002年12月。
私のお店は開業してから初めての忘年会シーズンを迎えることになりました。

「12月は一年を通じて売上を伸ばす数少ないチャンス」
「できるだけ多くの人たちに選んでもらえる飲み放題プランを用意しよう」

そう考えた私は、忘年会でお客さんたちが楽しんでいる姿を想像しながら飲み放題プランの作成に取り掛かった訳ですが、そこである問題に直面することになりました。

その問題というのが「どんなプランを用意すれば自分のお店を選んでもらえるのかが分からない」ということ。多くの人たちに自分のお店を選んでほしいけど、どんなプランなら選んでもらえるのか分からない。

悩みに悩んだ結果、そこで私はある事を思いついたのです。

それが、お客さん自身が色んなプランを自由に組み合わせて作ることができる「自分たちだけのオリジナル忘年会」というもの。

これならば、お客さん自身がプランを作れるのだから、きっと満足してくれるはず。
そう考えた訳ですが、当時の私はまだ重大な見落としをしている事に気づいていなかったのです。


年が明けた2003年1月。
初めての忘年会シーズンが終わった結果、どうなったのか?

結果は惨敗。
自信を持って用意したオリジナル忘年会プランは、ほとんど誰にも使われることはありませんでした。

「なぜ、お客さん自身で自由に作れるプランにも関わらず選んでもらえなかったのか?」
当時の私は理解できませんでした。

でも今、私の手元にある当時の飲み放題プランの説明書きを見返してみると、選ばれなかった原因がよく分かります。

私のお店が選ばれなかった原因。
それは、私のお店の飲み放題プランが「分かりづらい商品」だったから。

当時、私はお客さんにより多くの選択肢を用意するほど、お客さんから喜ばれると思っていました。だからこそ、組み合わせを変えることで24種類にもなる飲み放題プランを用意した訳です。

ただ、これはお客さんの視点で考えるならば、似たような商品を24種類も用意されたらどれを選べばよいのかも分からないですし、そもそもお店が何を強みにしているのかも分かりません。

どんなに選択肢を用意したとしても、分かりづらい商品は選ばれないということ。
逆に考えれば、選択肢を絞るほど強みが分かりやすく、選ばれるようになるということ。

自分のお店の商品はお客さんから見て分かりやすいのか。

街にある飲食店が自分のお店だけならば、たとえ分かりづらい商品であっても選んでもらえるかも知れません。ただ、実際は街に多くの飲食店が存在している以上、お客さんがわざわざ分かりづらい商品を理解しようとしてくれることなどなく、他店の分かりやすい商品を選ぶのは当然だと、今では思えるのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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