第189回 継続力について考える

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

前回のコラムで、私は「改善のない継続をしても成果にはたどり着かないのではないか」といった内容を書きました。そんなコラムを書いたあとに、ふと思い出したことがあります。

それが「そもそも継続自体ができなくなる場合も多いよな」ということ。


私たちはよく「あの人は継続力がある」とか、「継続力がないと何事も上手くいかない」といった言葉を口にします。

こうした言葉の前提にあるのは、継続力という能力が人それぞれに備わっていて、その能力は個人によって高低の差があるという考えなのだと思います。

確かにこの考え方というのは間違ってはいないように感じる一方で、いざ自分の過去を振り返って考えてみると、妙なことに気がつくのです。

それが、「自分の中でも継続ができたことと、継続ができなかったことがある」という事実であり、個々人によって継続力という能力に差があるならば、自分は継続力があるのかないのかが分からないのです。

そこで私は思うのです。
物事が継続できるかどうかを決定づけているのは個々人の「継続力」よりも、何を継続しようとするのかを決める「選択力」なのではないか、と。

つまり、継続力があると言われる人は続けられるものを選択するのが上手いのであり、継続力がないと言われる人は続けられないものを選択してしまっている可能性が高いのではないか、ということ。

もちろん、これは私の考えなので正しいのかどうかは分かりません。

ただ、商売で成果を出すためには継続が欠かせないのであれば、継続をするために無理やり自分のモチベーションを高めようとしたり、継続に苦痛を感じながら我慢しようとすることに労力を使うよりも、無理なく継続できるものを見極める力を付けることに意識を向けた方が、はるかに継続できる可能性も高くなるような気がしてなりません。

「継続=大変なもの」という先入観を持ってしまうのは創業当時の私だけではないとは思いますが、そんな先入観を捨て、苦労を感じることなく続けられるものを選択するからこそ、その過程から新しい改善も生まれるし、そんな改善から生まれた成果に手応えを感じられるからこそ、また継続したくなるのではないでしょうか。

そう考えるのであれば、継続力とは個々人に備わった特別な能力ではなく、継続できるものを選ぶ「選択力」から生まれた結果であり、逆に考えれば、「続けられるように頑張ろう」と継続力を先に意識してしまうような取り組みは、そもそも選択自体を間違えている可能性があるといえるのではないか、と私は思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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